「……おい、お前には学習能力がないのか」
「え?」
声をかけられても、フェリチータは声のほうが見えていなかった。
持っている本が視界を塞いでいた。
だが、その視界はすぐに明るくなる。
その視界の先には、ムッとした様子のノヴァがいた。
そしてノヴァの手には、本が数冊。
どうやら、フェリチータが持っていた本を取ってくれたらしい。
「あ……ありがとう」
「全く……また勉強用か?」
「うん……」
まさにその通りで、フェリチータは勉強するために本を借りていた。
そして、その本を返却する途中だった。
「以前も言っただろう。どうして、懲りないんだ」
「ご……ごめん」
前にもこうして注意されて、ノヴァに本を持ってもらった。
本を沢山読んであれこれと詰め込むのではなく、効率よく勉強する方法も教わったのに…。
「どうしても、色々と気になっちゃって……。あれもこれもって、選んでるうちにいっぱいになっちゃった」
フェリチータは言っていて、声が小さくなるのがわかる。
そんなフェリチータにノヴァはため息をついた。
これは、完全に呆れているため息。
「怪我をしたら、危ないだろう。幹部なのだから、自分の責任は持て」
「う……」
ノヴァの正論に、フェリチータは何も言い返せない。
「仕方ないな」
「ノヴァ?」
「本を探すのに迷った時には、僕に言え」
「ノヴァに?」
「ああ。その方が効率がいい」
思わぬ申し出に、フェリチータは目を丸くした。
確かにありがたいけど……。
「でも、ノヴァの迷惑にならない?」
「お前に怪我でもされるよりはマシだ」
「……っ」
厳しい言い方はするものの、その中には優しさも含まれている。
フェリチータにはそれが伝わっていた。
「よろしくね」
「ああ」
一緒に歩いていると、自然に笑みが零れていく。
2人で歩く距離が、とても楽しい時間になっていた。
~fin~
同人活動も行っています。