「ノヴァッ!!」
「フェル?」
急に自分の元に訪ねてきたフェリチータに、ノヴァは驚いた。
何故だか、にこにこと笑っている。
もっとも、フェリチータの行動はいつも突発的ではあるが……。
「ノヴァ……、誕生日おめでとうっ」
「あ……ああ」
どうやらフェリチータは、誕生日を祝うためにやってきたらしい。
目的がわかると、ノヴァとしても納得した。
「何か、自分の誕生日なのに……反応薄いー」
「別に、一つ歳を取るだけだろう。そんなに騒ぎ立てるほどでもない。もう、子供じゃないし……」
「むー」
自分の言葉に不服があるのか、フェリチータは不満気だ。
でも、実際にそう思っているから仕方がない。
フェリチータはそんな自分に対して、諦めていないらしい。
不満気だった表情が、再び笑顔に変わる。
「ノヴァは欲しい物とかないの?」
「欲しい物?」
「そうだよ、誕生日なんだし。何かプレゼントさせて?」
「特に……これといって……」
「本当に?何も?」
「欲しい物は与えられる物ではなく、自分で得る物だと思っているからな……。特に欲しい物……なんて」
ないと、言いかけてノヴァは思いとどまる。
自分の言葉に対して、フェリチータが落ち込み始めたからだ。
せっかくお祝いしてくれる厚意を、傷つけたいわけではない。
だからといって、先ほど自分が言った言葉も事実であって……。
「……フェル」
「何?」
「一つだけ……欲しい物がある」
「ほんと…?」
ノヴァの言葉に、フェリチータはきらきらと瞳を輝かせている。
そんな様子に、ノヴァは笑みが零れてしまう。
「これはお前にしか……その頼めないことだ」
「なになに?何でも言って?」
ノヴァはフェリチータの手を取って、そっと口づけた。
「え……?」
「お前が……僕のそばに……ずっと居てくれれば…それでいい」
「!!」
フェリチータは目を見開かせて、驚いている。
ノヴァは、次第に赤くなっていく顔を見つめていた。
「そ、んなの当たり前だよ」
唇を震わせながら、何とか口にするフェリチータ。
恥ずかしいのか、顔は赤いままだ。
だが、納得の返事をもらえてノヴァとしても満足だ。
「こ……こんなことでお祝いになるの?」
「ああ、十分だ」
これから先も、ずっと一緒に居られればそれでいい。
これからも……共に歳を重ねられるなら……これに勝る幸福はない。
「あとで……リモーネパイ持っていくね。一緒に食べようっ」
「ああ、楽しみに待ってる」
2人は目を合わせると、自然と笑い合っていた。
fin