いつものように、フェリチータがダンテに会うために船にやってきた。
忙しい時間の合間に、何とか2人で落ち合う。
「っしゅんっ!!!」
「お嬢さん、寒いか?」
「ちょっとだけ」
海の近くで、陽も落ちてくると気温も昼間よりも下がる。
そのため、フェリチータは少しだけ肌寒くなり、くしゃみをしてしまった。
隣にいるダンテがその様子に気づく。
「これを羽織るといい。風邪を引かせるわけにはいかないからな」
そう言いながら、ダンテは自分の着ていた上着をフェリチータに羽織らせる。
「え……でも。ダンテが寒くなっちゃうよ」
「何、心配はいらん。海の男は丈夫だからな」
「ありがとう」
明るく笑うダンテの好意を、フェリチータは素直に受け取る。
長身のダンテの上着はやっぱり大きい。
それはすっぽりと、小柄なフェリチータを包み込んでしまうほどだ。
気をつけなければ、引きずってしまうだろう。
「やっぱり、お嬢さんには大きいな」
「うん。でも、温かいよ」
「それは良かった」
ふんわりとある匂いが、フェリチータの鼻をくすぐる。
その上着からは、海の匂いがした。
「何か……海の匂いがする」
「ん?やっぱり船にいる事が多いからだな。すぐについてしまうんだろう」
この上着についた匂いは常に海にいることの多い、ダンテの匂いそのもの。
その匂いに包まれると、フェリチータは心地よく感じた。
「何か……安心する……ダンテの匂いだから……」
「そ、そうか」
フェリチータの言葉に、ダンテは動揺した。
計算のないその言葉は、ダンテは困ってしまう。
「そ……そろそろ戻ろう。このままだと本当に風邪を引いてしまうから」
「うん」
ダンテはフェリチータの手を取って、そのまま歩きだす。
手から伝わる熱が、フェリチータにも伝わる。
その熱に、心が満たされていくのを感じていた。
~fin~
同人活動も行っています。