「……は…っ」
「信乃、上に乗って」
「ん……」
信乃は素直に自分の上に乗る。
こういう時だけは……素直だ。
「……っ」
信乃を感じると、とてつもない幸福にとらわれる。
それは……信乃も同じだろうか?
そんな想いが……常に駆け巡る。
「……お腹すいたな」
「は……今日もそれ?相変わらず、色気ないね」
「うっさい、蒼」
さっきまでは熱を分けあっていたというのに……信乃は事が終わるといつもこれだ。
それほどまでに夢中になっているから……だとは思うが……。
だから……つい聞いてみたくなった。
「信乃はさ……どうして俺の相手をしてくれるの?」
「は?」
「同情?慰め?それとも……欲求不満の相手?」
「…………最低」
自分でも酷いことを言っているとは思う。
だが、信乃の気持ちがわからないから……どうしても聞いてしまった。
「俺が……お前に抱かれるの……そう思ってたのか?」
「……信乃?」
「……俺の気持ちは……考えてくれてなかったのか?」
「信乃の……気持ち?」
信乃が自分に抱かれていたのは……同情でも慰めでも……ましてや欲求不満の相手でもない。
……だったら?
……確かめるのが怖くて……聞けなかった可能性が一つある。
それは――。
「もういい、帰る」
信乃はそう言って、寝台から降りていて……蒼は何も考えずに行動に出た。
素肌の信乃を後ろから抱きしめる。
「……動けないんだけど」
「うん」
「重いんだけど」
「ごめん……信乃」
信乃の一つ一つの声が、震えて聴こえる。
泣かせたのは自分。
「お前……馬鹿だ」
「だったら……聞かせてよ。信乃の気持ち」
「……俺……は」
信乃の次の言葉が出るのを、蒼は心待ちにしていた。
~fin~