若瀬尾 未来捏造。
いつの間にか……そうなってた。
仕事が終わった時間、俺はいそいそと帰り支度を済ませる。
「若松、飲みに行かないか?」
「いえ、今日はすみませんっ」
「つきあい悪いなー若松」
そう言われても仕方がないことは自覚している。
だが……今日は早く帰らなくては……。
俺は今日この日をずっと待っていたのだ。
「よ、博隆」
「結月さん、お帰りなさい」
家に帰れば……久しぶりに会う奥さんの姿があった。
「どうでした?海外公演」
「んー、いつも通りだったな。あ、ご飯は美味かった」
「……全く大物ですね」
結月さんの今日の海外公演は、ごくわずかの選ばれた者しか参加出来ないと聞く。
日頃からプロの歌い手として国内でも飛び回っていて、海外でも多くの人をその歌声で魅了したに違いなかった。
やっぱりすごいな結月さんは――。
「それよりも博隆疲れてるだろ?少し横になったらどうだ?」
「え?いや……結月さんのほうが……」
「私は飛行機でもさっきも寝てたから平気だ。ほら……休め」
「わ……」
どうやら結月さんは俺に膝枕がしたいらしい。
半ば強引に寝かされて、結月さんに膝枕をされていた。
俺としては久々に感じる体温が心地良い。
「どうしたんです?急に」
「ん?普段家にいないことが多いからな。たまには奥さんらしいことでもしておこうと思ってな」
「え?今のままでも十分なのに……?」
どうしたんだろう?急に……。
何故か結月さんの表情が暗いような……。
「どうしたんですか?」
「殆ど公演で家にもいないし、すれ違いばかりで……嫌にならないか?」
「っ!!」
また、気にしてる。
普段は大雑把なくせに……本当にもうこの人は……。
俺は勢いよく起きて、結月さんと向き合う。
「なりませんよ!!」
「博隆……」
「たとえ一緒に過ごせる時間が少なくても……一人でいることが多くても……ずっと結月さんのことを考えてますよ……俺は」
「……」
「だから……大丈夫なんです」
離れてる時間は多いし、寂しい。
でも……結月さんの活躍もすごく嬉しいから……そんな寂しさは吹っ飛ぶんだ。
「お前はすごいな……博隆」
「これくらいの図太さがないと……貴女を受け止められませんから」
「これからも待っててくれるか?」
「もちろん……俺は……貴女の帰る場所ですから……」
「ああ……そうだな」
そう言って微笑む結月さんを……俺は久しぶりに抱きしめていた。
同人活動も行っています。