千代ちゃんの誕生日ネタですっ。のざちよ。
「お花見?」
「ああ。今度、春の話を描こうと思うんだが……参考に花見に出かけようかと……一緒にどうだ?」
「お、いいじゃねぇか」
「いいね、行こうっ」
野崎の提案に、千代は御子柴と共に頷いた。
他のアシスタントのメンバーにも声をかけ、部活が終わったら合流することになった。
帰宅部である野崎と御子柴、部活のない千代が……先に公園で場所取りをする。
そのため、公園で待ち合わせすることになったのだが……。
「あれ……野崎くんだけ?」
「佐倉か」
待ち合わせ場所にいたのは野崎のみで、御子柴はまだ来てないらしい。
「御子柴から少し遅れると連絡はあったから、先に場所取りをしに行こう」
「う……うんっ」
(の……野崎くんと二人きりっっ)
思わぬ事態に、千代の心は急に騒がしくなった。
野崎と共に公園の中を歩く。
春休みに入った今、自分たちと同じ目的で花見をしてるグループがちらほらと見えた。
「この辺りでいいか」
「うんっスペースもあるし……桜もよく見えるねっ」
この場所は桜も綺麗だし、人数分が座れるスペースもある。
用意してきたシートを広げて、各々腰掛けた。
「わ……桜綺麗……」
「そうだな……」
下から見ると、空が桜色に染まっていく。
いくらでも見ることが出来るから、不思議だ。
「さくら……」
「え……?」
「ーー綺麗だな」
「っ!!」
野崎がさらりと告げた言葉に、千代の心は更に落ち着かなくなる。
(さ……桜の事だよねっ。びびびっくりしたっっ)
急に……名前を呼ばれたのかと思った。
でも野崎が口にしたのは……桜。
だから……変に意識する必要などないのに……。
千代がドキドキとしていると、その傍らで野崎が持っていた紙袋から重箱を取り出す。
その中には野崎の手作りの料理が入っていた。
(あ……相変わらずの女子力……)
野崎の料理の腕前はかなりのもので、その一つ一つが手が込んでいて味も美味い。
「ああ……そうだ、これ」
「え……?」
千代の手に渡されたのは、小さな箱。
「開けてもいいの?」
「ああ」
箱を開けると、その中から桜色のケーキが出てきた。
野崎の手作り……?
「何で……?」
「今日……誕生日なんだろ?」
「っ!!」
「――誕生日おめでとう……佐倉」
(やっぱり……ずるい。ずるいんだよ、野崎くんは……)
きっと野崎本人にそんな気はまるでないのに、自分を喜ばせるのが上手い。
そんな野崎に……ドキドキとさせられっぱなしだ。
ーーだから、今日は一歩踏み出す。
「ーーと。風が出てきたな」
「……」
風が吹いて、桜の花びらが舞い上がる。
今日は桜が……そんな自分を後押ししてくれた気がした。
「佐倉?」
「ーー野崎くん……あのね、聞いてほしいことがあるの」
「……?」
「私……っ」
今日くらいは……野崎をドキドキとさせてみたい。
そんな想いから、自分の気持ちを口にしていた。
野崎に想いが届くように……心をこめて。
fin
同人活動も行っています。