琉夏×バンビ。
主人公の名前は、「小波 美奈子」です。
「温度差」の琉夏視点。
――外が暗くなると同時に、俺の気持ちも暗くなった。
「雨か……」
帰宅の時間になって昇降口へ来ると、
琉夏は足止めをくらった。
外は雨。
しかもどしゃ降りだった。
これでは家に着くまでに、確実に濡れてしまう。
「琉夏くん、どうしたの?」
「あ、美奈子」
後ろからひょっこりと声をかけてきたのは、美奈子だった。
その愛らしい顔を見ると、自然と笑みが零れてしまう。
「こんな天気だろ。どうするかなぁって思ってさ」
「傘ないの?」
「うん、ない」
傘など持っているはずがなく、最早『諦める』しか選択肢にはない。
「だから、走って帰ろうかなぁって思ってたとこ」
「ええっ、風邪引いちゃうよ」
琉夏の言葉に、美奈子は当然ながら目を丸くしている。
そんな美奈子から漏れたのは、救いの言葉だった。
「一緒に帰ろ?私傘持ってるし」
「やたっっ。ありがとう、美奈子」
美奈子の申し出ももちろん嬉しかった。
けどそれよりも、美奈子と帰れる事のほうがもっと嬉しかった。
美奈子が傘を開くと、琉夏は自然とその持ち手へと手が伸びる。
「俺が持つよ、傘」
「え……でも」
「美奈子の身長だと、俺の背まで届かせるの大変だろ?」
「う……」
美奈子と琉夏の身長差では、美奈子の手が痛くなりそうだ。
琉夏の言葉に納得した美奈子は、申し訳なさそうに傘を渡してくれる。
「ごめんね」
「むしろ俺が助かってるんだから、気にしないで」
「うん……」
気にしてしまうのは、美奈子の性格なのだろう。
人の事ばかり気遣って、自分の事はおざなりになる。
ふと美奈子を見れば、その小さな肩は濡れていた。
やっぱり折り畳み傘は、少し小さいようだ。
「美奈子」
「え?」
「濡れるから、もっと傍に来て」
「あ……うん」
そう言えば、躊躇いがちに美奈子は琉夏の方へと身体を寄せる。
琉夏は何故か、その身体をもっと抱き寄せたい衝動に駆られた。
だが、そんな事は出来ない。
付き合っているならともかく、ただの友人では……。
美奈子はまだ、自分の気持ちを知らない。
もし、昇降口に居たのが自分ではなく、
琥一や他の男でも美奈子はきっと同じ行動に出るだろう。
そんな事を考えると、胸が痛くて仕方がない。
そんな気持ちを美奈子に知られたくない。
この気持ちはまだ、気づくわけにはいかない。
まだ、知らないままにしておきたかった。
~fin~
同人活動も行っています。