乙女ゲーム・八犬伝などの二次創作のごった煮ブログです。
隼ツグ。 隼人ルートのネタバレ注意。
難攻不落の『公園の姫』
いつしかそんな名がついた彼女は……今日も公園のベンチに座って本を読んでいる。
彼女は本に夢中で、他の何にも目が入らない。
本を読む彼女の姿は、見た目の美しさもあってとても絵になっており、誰もが見惚れていた。
それはもちろん――俺も。
いくら彼女へと視線を向けようとも彼女の視界には全く入らない。
彼女は気づかない。
こちらへと気づいてほしい反面、他の男と同じように振られてしまうのがやはり怖かった。
いつ彼女が他の男の元へと行くかわからない。
迷っている場合でないというのに……。
その時間もまた……想いを募らせる。
(こっち……見ないかな)
少しだけ離れたところで彼女を見ているが、全くこちらへと気づく気配はなかった。
もし……こちらを見てくれたら……彼女に声をかけてみようか?
振られたとしても……せめて……何かの糸口になれば……。
まるで……自分の鳥籠にこもって……その安全な場所から出ようとはしない彼女。
それを見るしか出来ない自分が歯がゆかった。
結局……その日声をかけることは叶わず、いつしか彼女はその場からいなくなった。
今日も彼女は本を読んでいる。
その姿に見惚れてしまうのは……もう仕方ないかもしれない。
だって、この瞬間に彼女に一目惚れをしたのだから。
――と、不意に彼女が本から視線を外して顔を上げた。
「あ」
「隼人」
視線が彼女――ツグミと合う。
ツグミは持っていた本をバッグへとしまい、こちらへと笑いかけてくれる。
俺はそんな彼女へと近づいていった。
「悪い、遅くなった」
「ううん。大丈夫だよ」
今日は互いに非番だから一緒に出掛ける約束をしていたのだが、出先に俺だけが朱鷺宮さんに呼ばれた。
いつ終わるかわからなかったので、ツグミには公園で待つように伝えてあった。
朱鷺宮さんの用事は小一時間で終わったが、今日はさすがに時間が惜しい。
せっかく二人で過ごせるというのに……。
「行くか、早くしないと今日が終わっちまう」
「うん」
歩き出そうとしたところで、ふと彼女の手が目に入った。
「手、繋ごうぜ」
「え……う……うん」
手を差し出せば、ぎこちないながらもツグミが手を出してくれた。
俺はその手をしっかりと握りしめて、歩き出す。
視線が合えばツグミは恥ずかしそうで……でも笑顔を向けてくれる。
難攻不落の『公園の姫』
鳥籠から出た彼女が……俺の元へと舞い降りる。
今はこの手にあるのが嬉しく、最高に幸せだった。
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プロフィール
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文月まこと
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女性
自己紹介:
乙女ゲーム・八犬伝中心に創作しています。萌えのままに更新したり叫んでいます。
同人活動も行っています。
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