一応くっついた二人です。
それはある昼下がり。
政務の合間に黎翔が夕鈴の部屋に訪れて、お茶を飲んで談笑していた……はずだった。
「そういえば……夕鈴っていつから僕のこと好きなの?」
「ふぇ!!」
突然の話題に、夕鈴は持っていた茶器を落としそうになる。
幸い落とさずに済んで、心底ホッとした。
だが……まだ本当の意味では安心出来ない。
いったいどうしてこんな質問をするのだろう……?
「な……え?あの……陛下?」
「ちょっと気になって。結構怖がらせたり、危険な目にも合わせたのに……不思議だなって」
「そ、そうですか……」
おまけに借金苦だったし……権力争いにも巻き込まれて……様々なことがあった。
その中でも芽生えた気持ちは少しずつ成長して……隠すことも難しくなったのは夕鈴自身も自覚している。
「……ね、どうなの?」
「そ……それは」
ジッと黎翔に見つめられて、夕鈴の心が騒ぎ出す。
本当に黎翔との会話は心臓に悪いと思いながら、夕鈴が口に出した言葉は……。
「ひ、秘密ですよっっ」
「えー」
そんなの改めて言えるわけがない。
はっきり自覚したのはあの家出騒動だったけど、惹かれていたのはもっと前……初めて会った頃だったかもしれない……なんて。
「もう言いませんからね、絶対っ」
この話はこれで終わりと打ち切る夕鈴だったが……。
「そんなに秘密にされると気になるな」
「っ!!」
声が低くなったのを感じて、夕鈴は焦る。
先ほどまでは小犬だったはずなのに、いつの間にか狼へと豹変していた。
「ちょ……近いですよっ陛下っっ」
グッと黎翔が夕鈴へと距離を詰めてきて……逃げ場がなくなる。
「このまま問いただして……いつ我慢できなくなるか試してみようか?」
「言……いません」
何とか応戦するも、その距離の近さに夕鈴の顔は真っ赤だ。
黎翔はまったく引いてくれない。
「夕鈴」
「……っ」
甘く名前を呼ばれて抱きしめられて……夕鈴は身体をびくつかせる。
「へ……いか……あの…離してください」
「言う気になったか?」
「……」
夕鈴が口を噤んだのを見て、黎翔は妖しく笑う。
「だったらこのままだな」
「っ!!」
夕鈴はその甘い腕の中に捕らわれながら、必死で攻防を繰り広げていた。
同人活動も行っています。