乙女ゲーム・八犬伝などの二次創作のごった煮ブログです。
千代ちゃん、誕生日おめでとうっっ。今年もお祝いお祝いっ。今回は夫婦編で。
それは唐突に、梅太郎くんが言った。
「欲しいもの?」
「何かあるか?」
彼の言葉に、私は目が点になった。
突然に言うのが梅太郎くんらしいけど……。
「???」
欲しいもの?
いきなり言われても、思いつかなくて。
でも、梅太郎くんが言うからきっと何かの意味はあって。
私はぐるぐると考える。
「と、特には……ないかな」
「ない……のか?何か出てこないか?」
「う、うん」
「……」
あ。みるからに梅太郎くんが落ち込んでる。
でも、これには理由があるのだ。
「う……うん。だって、梅太郎くんが……」
「俺が?」
私が言うよりも早く、梅太郎くんがいつも手配してくれる。
私がTVで紹介されたケーキが気になったら、すぐに買ってきてくれたし。
お店で見かけた服とか可愛いなと思ったら、すぐにそれをレジに持っていくし。
特には口に出していなくても、私の表情を見て梅太郎くんは判断しているらしい。
「そうか。そう言えばそんなこともあったな」
「ね。私はいいって言ってるのに、梅太郎くん結構買ってるんだよ?」
「ケーキは千代が食べたそうにしてたし、服は千代に似合いそうだと思ったし……別に問題無いと思うが?」
「もうっ、問題あるよっ」
梅太郎くんは私には沢山買うのに、自分は全く買わないのだ。
私にではなく梅太郎くんが欲しいのを買ってと言うと……。
「だって、必要ないからな」
と、一蹴してしまうのだ。
「私はもう梅太郎くんに十分すぎるほど、貰ってるんだよ。だから……返せなくて申し訳なくて……」
「……千代」
「え……ん」
梅太郎くんは唐突に私を引き寄せると、その唇を重ねてきた。
え?え?何でいきなり?
驚いている私に、梅太郎くんが囁く。
「千代はいつも俺に……元気をくれるから。プレゼントを渡すとすごい嬉しそうにするし……つい……その笑顔を見たくてな。だから、俺のほうが沢山貰ってる」
「梅太郎くん……」
その言葉が何よりも嬉しいよ。
「でも……あんまり買い過ぎはダメだよ?」
「ああ……。それなんだが……」
「梅太郎くん……まさか」
「ああ。きっと千代は特に欲しいものが浮かばないと思って、用意してある」
「も……もうっ」
もうすでに買ってあるなんて……っ。
「はい、これ」
「これ?」
梅太郎くんが渡したのはラッピングされた小さな箱。
「あけてみてくれ」
「う……うん」
私がラッピングを解くと、そこに現れたのは……。
「ピアス?」
「ああ。これが欲しいって言ってただろ?」
「え……覚えてたの?」
「もちろん」
梅太郎くんと待ち合わせてしている時、店先で見かけたもの。
それは桜の形をしたピアスで、私が一瞬にして心を奪われた。
けれど、さすがに良い値段というべきか……学生で主婦をしている自分には分不相応だと思った。
その場にいなかった梅太郎くんには……気づかれていないと思ったのに……。
「ど、どうして」
「ん?あの時、すぐ近くにいたんだ。結構集中して見てただろ?けど、すぐに諦めた顔をしたから……俺に気遣って」
「うん……」
ああ、何だ。梅太郎くんには全てバレバレだったんだ。
「今日は千代の誕生日なんだから、遠慮するな」
「あ……」
そうか……と私は自分の誕生日を思い出す。
「千代、誕生日おめでとう。たまには……こういうプレゼントもいいだろ?」
「ありがとう、梅太郎くんっ」
私は梅太郎くんへと抱きついて、その胸に縋りつく。
そして……。
「……梅太郎くん」
「ん」
「……一つだけ、欲しいものがあったから……聞いてくれる?」
「もちろん」
私はこう耳元で彼に囁く――。
梅太郎くんの……ことが欲しい……と。
小さくて聞き取りづらい私の声に、梅太郎くんは私を抱き上げることで返事をくれた。
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プロフィール
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文月まこと
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自己紹介:
乙女ゲーム・八犬伝中心に創作しています。萌えのままに更新したり叫んでいます。
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