ノルンノネット
夏彦×深琴 6月のラヴコレで無配したものです。
――夏彦と生きていくと決めた。
今まで一緒にいた仲間たちとも、幼い頃から一緒だった朔也とも離れ離れ――。
それは別に後悔はしてないけれど……。
船の中の自分の部屋で……深琴はボンヤリとしていた。
今……深琴といつも一緒にいる白ヒヨコだけ……だ。
「はぁ……」
『どうかしましたか?』
「別に……」
『何かありました?』
「何もないの……何も」
『そんな風には見えませんが……』
白ヒヨコは心配そうに深琴をのぞき込んでいる。
常に寄り添ってくれる白ヒヨコに、深琴としても絶大の信頼を寄せていた。
落ち込んでいたのもどうやらバレバレらしい。
深琴は心配そうにしている白ヒヨコの頭を撫でていた。
「大したことじゃないの……ただ」
『寂しいんですか?』
「そ……っ」
この白ヒヨコはあっさりと言ってしまう。
『皆さんと離れて……』
「別にそんなことはないわよ……。これは自分で決めた道だもの」
『それとも……』
「何よ?」
『主様と一緒に居られなくて……』
「っ……!!」
『やっぱりそうなんですねっ』
「そ……そんなことないわよっ」
慌てて否定するものの、動揺は隠し切れない。
『主様に伝えればいいのに……』
「そんなこと……言えないわよ」
『どうしてです?』
「夏彦は忙しいから……そんなことは言えないわ」
『そんな……主様は言ってほしいと思ってますよ』
「困らせることはしたくないの」
『……』
調査や船のメンテナンスなどで、夏彦は様々な事で忙しい。
共にいられるのは夜だけで……その夜も一緒にいられるのはほんのわずかだ。
でも……それは自分たちが決めた道。
この世界から争いを無くすために……出来る事をする。
戦争の引き金である結賀史狼がいなくなっても、人々の生活はすぐに改善するわけではない。
残党の小競り合いは毎日続いているし、銃が完全に無くなるわけでもない。
それでも……出来る事をすると……決めた。
2人で生きるために……。
だから……寂しいのも我慢しなくては……。
「……ってあら?」
気がつけば、白ヒヨコの姿がない。
「もう……どこいっちゃたの?」
夏彦と居られない分、白ヒヨコに側にいて欲しかったのに……。
(意外と薄情ね……)
そう深琴が呟いた時だった。
部屋の扉が開く音がして、白ヒヨコが戻ってきたのだと思った。
だが……その扉にいたのは……。
「……深琴」
「な、夏彦っ」
深琴が驚いていると、夏彦が近づいてきて……気がつけばその腕の中にいた。
久しぶりの温もりに嬉しかったが、今は驚きのほうが強い。
「どうしたの?調査は?」
「急いで終わらせてきた」
「そう……なの?」
(もしかして……あの子?)
薄情だと思っていたが、白ヒヨコは夏彦を呼んでくれたらしい。
何だか薄情だと思っていたのが、後ろめたかった。
「寂しかったのか?」
「そんなこと……っ」
夏彦に指摘されて、深琴は恥ずかしさのあまり否定しようとした。
だが……白ヒヨコが頭に浮かぶ。
『主様は言ってほしいと思ってますよ』
「ある……かも」
「素直なのも珍しいな」
「……っ」
「今はお前の傍にいるのは……俺と……………ヒヨコしかいない。お前の寂しさも悲しさもわかってやれるのは……俺たちしかいないんだから……」
「……夏彦」
深琴が夏彦の背中に腕を回す。
そうすると、夏彦が更に強く抱きしめてくれた。
起床の時間になっても、夏彦の手は緩まない。
「夏彦……そろそろ起きないと……」
「いや……まだこうしていたい」
「……」
夏彦にギュッと力強く抱きしめられて、深琴も離れがたかった。
「こうして……お前を抱きしめてるのが……一番落ち着く」
「夏彦……疲れてるの?」
「ああ、少しだけな」
「…………………だったら、もう少しこうしててもいいわよ」
「……」
「な……何とか言ってよっ!!」
「……いや……やっぱり可愛いものだと思ってな」
「……っ!!」
「深琴……」
顔を赤らめて何も言えないでいる深琴に、夏彦はその唇を重ねる。
深琴は恥ずかしがりながらも、その目を閉じていた。
~fin~
同人活動も行っています。