楽しみが待ってる。

要×浜路　　でホワイトデー

「はい、浜路」

「え……」


要が渡してきたのは、何やら可愛らしい小さな包み。

「今日はホワイトデーだから」

「あ……なるほど。律儀ね」

確かにバレンタインデーには要には渡したが、お返しなどは考えていなかった。

「良かったら、この後外に出かけない？」

「何故？」

「何故って……バレンタインデーのお礼をしたいんだけど」

「お礼なら、今貰ったでしょ？」

「それは五狐からの分だよ。何やらみんなで話し合ってたみたいだし」

「キツネちゃんたちから？」

そうならそうと言ってくれればいいのに。

あのキツネたちが自分のために贈り物を考えている図は、とても微笑ましい。

「だから、僕からのお礼で浜路と出かけたいんだけど？」

「……」

五狐からのプレゼントは素直に嬉しいのに、要からの誘いには何故か戸惑う。

だが、断る理由も特にはなかった。

「いいわ。付き合ってあげる」

「良かった」

要は先ほどとは違った笑みを見せて、本当に心から笑っているのだとわかる。

「何で、そんなに嬉しそうなの？」

「久しぶりに浜路と出かけるのが嬉しいから」

「馬鹿ね……」

「馬鹿でも何でも。大事なお姫様をエスコート出来るのは、とても光栄だよ」

「ほんと、馬鹿」

信乃と荘介も過保護な部分があるが、それ以外で大事にされるなんて思っても見なかった。

どこかくすぐったくて、恥ずかしい。

素直に受け入れるのは、まだまだ先かもしれないけど。

「帰ったあとで、とっておきのお茶を淹れてあげる。もちろんキツネちゃんたちも一緒にね」

「うわ……それは楽しみ」

「何よ？」

「いえ……行こうか？浜路」

「そうね」

帰ってきたら、楽しいお茶会が待っている。


そしてその前に、これからの外出を楽しもうと思った。


～fin～