乙女ゲーム・八犬伝などの二次創作のごった煮ブログです。
恋人同士。
それはある夜のこと。
「うーーーん」
「何唸ってんのよ。笠原」
郁がテーブルで突っ伏していると、柴崎がそんなに郁に気づいた。
「あんた、また何かやらかしたわけ?」
「ちょ・・・っ!!人がいつも問題起こしてるみたいに・・・」
「事実でしょうが」
「・・・・」
柴崎の言葉は正しく、郁は反論出来ない。
「で?何悩んでの?仕事絡み・・・それとも」
柴崎は面白そうな顔で話を続ける。
「堂上教官?」
「・・・・・・・・・・・」
郁はその言葉を聞いて、しっかり黙り込んでしまっている。
それが即ち、肯定を意味するのだが。
「また、堂上教官と喧嘩したの?」
「ちが・・・っ。そうじゃなくて・・・」
「何なのよ」
郁は言いづらそうに、小声で話を切り出した。
「何か・・・。堂上教官って大人だなーーって」
「は?何を今更」
堂上だけでなく、自分たちもいい大人なのだが・・・。
「何ていうか・・・。堂上教官はさ。色んなことをすんなりやっちゃうんだよね」
「わかんないわね。何がよ」
「その・・・キスとか、名前を呼んだりとか」
「・・・・・・・・・・・・・」
当麻の事件の時に自分からしたキスは、かなりぎこちない。
それに引き換え、堂上のキスはとても優しかった。
郁は未だにそれを慣れない。
必死に追いつこうと精一杯だった。
そして気がつけば、堂上は自分を名前で呼ぶ。
自分は未だに辿り着けないのに。
それは堂上の今までの経験で、大人だという事だ。
頭ではわかっていても、胸が痛くなる。
「惚気か・・・。アホらし」
「え・・・何でそうなるの!?」
郁としては惚気ているわけではなく、真剣に悩んでいるのだが。
「惚気よ。堂上教官が大人なのは当たり前でしょ?30代の男なんだし」
「それはそうだけど・・・」
「その上で、名前を呼んだりとかキスとか、恋人同士なら当然のことでしょうが」
「それもそうなんだけど・・・」
「まあ、ずっと上司と部下だったんだし。あんたはすぐ切り替えできないでしょ?」
「ううう・・・・」
「その分、堂上教官が大人なのは当然。あんたはそれに甘えてればいいんじゃない?」
「そうなのかな?」
何せ郁にとっては、付き合うこと自体が初めてなのだ。
そのため、些細な事でも気になって仕方がない。
「あんたは全く・・・・可愛らしいわね」
今時、こんなに初心な女は本当に珍しいのではないか?
そんな事を柴崎は思う。
だからこそ、堂上は惹かれたのだろうけど。
しかし、郁にはそんな余裕がまるでない。
(ま、楽しませてもらいましょうか?)
柴崎の楽しみはこの鈍感カップルがどうなるか、だ。
この純情乙女を、あの堅物な教官がどうするのかが楽しみである。
だが、これは下手に入っていかないで、遠くから見物するからこそだ。
「うーーーーんっ」
そんな柴崎の思いを他所に、郁はひたすら悩み続けていた。
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文月まこと
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自己紹介:
乙女ゲーム・八犬伝中心に創作しています。萌えのままに更新したり叫んでいます。
同人活動も行っています。
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