そばにいるだけで。

要✕浜路

「浜路はほんと勉強家だね」

「そうかしら？」

要は浜路の前に置かれた沢山の本を見て、思わず口にしていた。

そんな要に対して、浜路は目もくれずに本に夢中になっている。

せっかくの休日に浜路が帰ってきても、浜路は勉強で忙しい。

それが要にはつまらなかった。

「お茶にでもしない？それとも出かけない？」

「今日はこの本を読みたいから、無理ね」

「…………」

あっさりと断られる。

返答はどこかわかっていたが……、やっぱり寂しい。

「せっかく、君と過ごす時間なのに……」

「話なら、今してるじゃない」

「そうじゃないよ」

「じゃあ何？」

浜路は本に向けていた視線を要へと移動させる。

要はにっこりと笑って、こう告げた。

「君の声がもっと聞きたいんだ」

「……っ」

要の顔を見なければよかったと浜路は後悔した。

そうでなければ……聞き流せたのに…。

「ダメ？」

「…………ダメ」

浜路は動揺を誤魔化すように、視線を本に戻した。

すると、要からはため息が聞こえる。

「しょうがない。今日は君の傍にいるだけで……満足することにするよ」

「………勝手に、すれば？」

「うん。勝手にするよ」

「……………」


その言葉通り、要は浜路が本を読む傍らで…ずっとニコニコと笑っていた。


おかげで浜路は……本の内容がちっとも頭に入らなかった。


～fin～