乙女ゲーム・八犬伝などの二次創作のごった煮ブログです。
夫婦。
「うわぁーーーーっ」
その朝は、郁の叫び声から始まった。
その日は休日。
少し早めに目が覚めた郁は、朝食作りをしていたのだが・・・。
「また・・・、失敗しちゃった・・・」
郁が持っているフライパンには、目玉焼きらしきもの・・・があった。
色は焦げていて、形は崩れている。
とても食べる気にはなれない。
「ど・・・どうしよう・・・」
結婚してからというものの、家事は堂上と折半。
最初の頃は、郁と堂上はお互いに料理の腕は同じ位だった。
だが、どうしても得手不得手があるようで・・・。
明らかに堂上のほうが上達が早く、郁は失敗ばかり繰り返していた。
「うううっ・・・。篤さんの分も焦がしちゃったよ・・・」
自分だけならともかく、堂上の分まで失敗してしまい落ち込みは倍増だ。
食べ物を粗末にするのは気が引けたが、これを堂上に食べさせる気にはなれない。
意を決して処分しようとしたが・・。
「郁?」
「あ・・・。篤さんっ」
いつの間にか背後にいた堂上が、声をかける。
「お・・・おはよう。篤さん」
「おはよう。どうしたんだ?しょんぼりして」
郁は必死に隠そうとしたが・・・。
さすがに堂上は、郁の微妙な変化も見逃さない。
「え・・・・と。これ・・・」
「あーーー」
郁がフライパンの中身を見せると、堂上は納得した様に頷いた。
「ご・・・ごめんなさい。作り直すから・・っ」
堂上は郁の手を止め、郁が持っていたフライパンを取った。
「いいよ。食べるから」
「でも・・・」
「別に捨てることないだろう。郁がせっかく作ってくれたんだから、食べるよ」
「・・・・・・」
その言葉に郁は何も言えなくなる。
堂上は優しい。
郁の些細な失敗でさえ、許してくれる。
何とかして喜ばせたいのに、失敗ばかりだ。
「郁・・・?」
「ごめんなさい・・・。いつも失敗ばかりで・・・。ちっとも上手くならないし・・」
料理をまともに出来ない自分に、いつか堂上が呆れるのではと不安になってしまう。
だが、堂上はそんな郁の頭を優しく撫でた。
「ゆっくりでいい。これから上手くなればいいんだ」
「篤さん・・・」
優しい言葉をかけてくれる堂上に、郁は泣きそうになった。
「今日の昼は一緒に作ろうか。また、教えるから・・」
「うんっ」
堂上の提案に郁は頷いて、応えた。
少しでも喜んでもらえるようにするには、練習するしかない。
それを堂上は待っててくれている。
「ご飯にしよう。せっかく作ってくれたのが、冷める」
「あ・・そうだね」
郁と堂上は向き合いながら、席に着いた。
「いただきます」
2人の穏やかな休日が始まろうとしていた・・・。
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プロフィール
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文月まこと
性別:
女性
自己紹介:
乙女ゲーム・八犬伝中心に創作しています。萌えのままに更新したり叫んでいます。
同人活動も行っています。
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