乙女ゲーム・八犬伝などの二次創作のごった煮ブログです。
夫婦。
「篤さーん。お風呂出たよーー」
「ああ」
「……」
郁がお風呂を出ると、堂上はすでに寝室のベッドで本を読んでいた。
ただ本を読んでいるだけなのに、その真っ直ぐな眼差しに思わず見蕩れる。
その場に立っている郁に、堂上が視線を向けた。
「何突っ立ってんだ?」
「あ……」
そんな郁に、堂上が手招きをして隣に座らせる。
「まだ濡れてるじゃないか」
「でも、髪短いからすぐ乾いちゃうし」
「そう言ってすぐ風邪引くだろうが……いいから、ほら」
「もーー。大丈夫なのに」
郁は堂上にタオルを渡すと、それを受け取った堂上が髪を拭いている。
堂上は郁に対しては、人一倍世話を焼く。
郁は嬉しい反面、少し恥ずかしくなる。
「そう言えば、お前。昔髪が長くした時があったよな」
「あーと。パーティーの警護の時だよね。私が犯人を捕まえたら水浸しになっちゃって」
3年……いやもう4年も経つだろうか?
出版社主催のパーティーに、稲嶺の警護にあたった時だった。
犯人を捕まえたものの、噴水の中に落ちた郁はずぶ濡れになってしまった。
そのため、ホテルの関係者がドレスを用意してくれたが、
ドレスアップとウィッグをつけられてしまい、普段とは全く違う装いになった。
普段の郁を知っていれば、誰もが驚くような。
尚且つ、周囲の男の目を惹くほどだった。
そのため、郁が男に迫られたりと色々あったのだが……。
「普段は髪が短いから驚いた」
「確かに。私も伸ばしことがなかったから、新鮮でした」
あの時の事は、滅多に体験できないことだったと、今では思っている。
「伸ばしてみようとか思わないのか?」
「うーん。もうこの長さで慣れちゃったから、逆に違和感ありそう」
「そうか、お前らしい」
「それとも、篤さんは長いほうがいい?」
「俺か?」
郁が探るように堂上を見つめている。
あの時の郁は確かに綺麗だった。
その姿に見蕩れて、言葉にできはないほどに。
だが、男の目を惹くのだけは勘弁してほしい。
「俺はどっちでもいいけどな」
「えーー」
堂上の言葉に、郁は不満の声を上げる。
仕方ないので、わかりやすい言葉で付け足した。
「お前なら何でもいいってことだ」
「あ……ありがとうございます」
堂上の言葉が郁にとって、大きく揺れて顔が紅くなっていく。
昔話のついでに、郁はあの時に感じたことを口にした。
「あ、あの時、堂上教官が嘘でも『俺の女』って言ってくれて嬉しかったです」
そう言えばそんなことも言ったかと、堂上は思い出した。
照れて笑う郁が、今ではとても愛しい。
「あの時は嘘だったが……今でもそれは有効だ」
「はいっ」
「おい、こらっ」
堂上の言葉に嬉しくなり、郁は思わず抱きついていた。
~fin~
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文月まこと
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自己紹介:
乙女ゲーム・八犬伝中心に創作しています。萌えのままに更新したり叫んでいます。
同人活動も行っています。
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