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乙女ゲーム・八犬伝などの二次創作のごった煮ブログです。
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熊野に来たばかりのお話。

熊野へ訪れた千尋たちは、一時の休息をとる事にした。

常世への戦の前に、身体を休めなければならない。

そう判断し、千尋も休息をとるため散策していた。

「お前、こんなところで何やってるんだ?」

「あ……アシュヴィン…」

ぼんやりと森の中を歩いていると、後ろから声をかけられた。

「相変わらず、共も連れずに1人で出歩いてるんだな、お前は」

「それはアシュヴィンだって、一緒でしょ?」

いつも傍らにはリブがいる印象が強いが、今日はリブ1人だった。

「この辺は知らぬところも多いからな」

アシュヴィンは情報収集も兼ねて、1人で回っていたらしい。

その理由は最もだが、一国の皇子が出歩くものだろうか?

「理由はわかったけど、1人でいていいの?」

「ふっ……。確かに中つ国の兵にでも会ったら、攻撃されるかもな」

「なっ!!そんなことはさせないわよ」

「どうだかな。将のお前がそう思っていても、兵の中では複雑だろう」

「…………」

アシュヴィンの言うことは最もだった。

今ではアシュヴィンたちが仲間だったとはいえ、それ以前は敵同士だった。

自分の親しい者が傷つけれた者も、中にはいる。

「そうね……。でも、私はみんなを信じたいわ」

「信じる?何をだ」

「今、アシュヴィンたちを傷つけるような真似をしないことを……。今の状況が正しかったと思うことを……」

そう言い切る千尋の瞳は揺るぎない。

アシュヴィンはその瞳に何かを感じた。

千尋の想いを。

(変わった女だ)

そんな千尋に、アシュヴィンは惹かれてやまない。

千尋はまったく気づいていないだろうが。

「だったら尚更1人で出歩くな。お前がいなくなると困る者がいる。それを自覚するんだな」

「……わかったわ」

アシュヴィンの言葉は正論で、千尋には返す言葉がない。

思わず黙ってしまった千尋に、何か冷たいものを感じた。

「え……?」

千尋が顔を上げると、さらにそれは襲ってくる。

「むっ……。雨か」

「う……嘘っ」

その雨は小降りではなく、一気に土砂降りへと変わる。

「こっちだ」

「あ……」

千尋はアシュヴィンに引っ張られ、何とか雨が凌げそうな木陰を見つけた。

「恐らく通り雨だろう。ここで少し引くのを待つか」

「そう…ね……」

アシュヴィンの言葉に応えながらも、その会話はぎこちない。

千尋としては、今の自分の状態が問題だった。

(ど……どうしよう……)

雨を凌ぐためとはいえ、アシュヴィンの身体がとても近い。

それと比例して、自然と顔が熱くなる。

「……くしゅっ」

「寒いのか?」

「ちょっとだけ」

一瞬とはいえ、雨は千尋の身体の体温を奪っていた。

少しだけ寒気を感じ始めていた。

「仕方ないな」

「え……」

アシュヴィンは、自分の外套を千尋に被せた。

その外套からは温かさを感じる。

「ちょ……アシュヴィンが寒くなるから……」

「俺はお前ほどやわじゃない。男の厚意は素直に受けっておけ」

「あ……ありがとう……」

そこまで言われてしまうと、千尋は受け取るしかない。

アシュヴィンの外套はとても温かく、先ほどの寒さを和らげた。

「…………」

急に2人の間に沈黙が訪れる。

並んで立っている2人は、微妙な距離を保っていた。

千尋としてもどうしていいかわからない。

アシュヴィンとはこの間まで敵同士。

今では仲間だが、そう親しいとは言える間柄でもなかった。

「あ……」

千尋がちらりアシュヴィンを見ると、その肩口は濡れている。

千尋を濡らさないため、自然とそのスペースを空けていたのだとわかった。

外套も千尋に貸し、自分の身体は雨で濡れている。

そんなアシュヴィンの心遣いに、千尋の心は自然と温かくなる。

「アシュヴィン……。肩濡れてるからもう少し、こっちに来たら?」

「別にお前が気にすることじゃない」

「気になるわよ……。ほらっ」

動こうとしないアシュヴィンの手を取ると、その手からは冷たさを感じる。

「アシュヴィン……。手冷たい」

「そうか?元々こんなものだろう」

「嘘っ!!これじゃ、アシュヴィンが風邪引いちゃうわよ。これ、返すから」

「馬鹿、いいって」

「でもっ」

「仕方ないな」

頑として納得しない千尋に、アシュヴィンは実力行使に出た。

「!!」

「これなら文句ないな」

アシュヴィンは外套ごと、千尋を抱きしめる。

アシュヴィンのその身体は、やはり冷たかった。

「お前の体温は温かいな」

「……そう?」

「ああ」

密着させている身体は、自然と体温が上昇していく。

千尋は、自分の温もりが少しでもアシュヴィンに分けれたらと思っていた。

だが、徐々にその行為に動揺している自分がいた。

不快を感じている訳ではない。

しかし、この気持ちに説明が出来ない。

ただ一つ願ったのは……。





まだ……、雨が止まないでほしい……。





それはほんのささやかな願いだった。







~fin~


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文月まこと
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自己紹介:
乙女ゲーム・八犬伝中心に創作しています。萌えのままに更新したり叫んでいます。
同人活動も行っています。
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