乙女ゲーム・八犬伝などの二次創作のごった煮ブログです。
熊野にて。10000HIT記念。
そこは熊野のある森の奥。
その場所に千尋は一人でいた。
「ここなら誰も来ないよね」
千尋が辺りを見回すと、そこには静けさのみ。
それを確認すると千尋は、着ていた服を脱ぎ始めた。
「やっぱり水浴びは気持ちいい…」
最初は触れた時の冷たさも、徐々に身体が馴染んでくる。
以前水浴びをした時も思ったが、身体が綺麗になり気持ちも変わっていく。
これからの事を考えるために、頭の中を整理させたかった。
「狭井君に教えてもらってよかったかも……」
千尋が少し考える時間が欲しいと、狭井君に頼んだ。
すると、狭井君は森の奥の泉を教えてくれた。
泉の水はとても透き通っていて、小さな滝も流れている。
その透き通った泉で水浴びし、これからの事考えようと思った。
戦の事ともう一つ。
「もうすぐ……なんだ」
もうすぐ、アシュヴィンとの結婚が控えている。
それはこれからの戦のための、言わば『政略結婚』
狭井君の提案と、アシュヴィンの同意の元で行われる。
それに伴い、準備は進んでいく。
だが、千尋だけは取り残されていた。
「頭ではわかってるんだけどな……」
自分は王族だ。
国のためになる事なら、何でもしなくてはならない。
しかし、今の千尋にはどうしても割り切れなかった。
相手は自分が今まで、敵だと思っていた相手。
そしてそれ以上に、気になっていた相手だった。
「もー、よくわかんないっ」
いくら考えてもわからないままで、千尋はいっそう深みにはまっていた。
「一体、何だって言うんだ」
アシュヴィンは訳がわからないまま、森の奥へと歩いていく。
事の発端は、狭井君だった。
『姫が戻ってこないので、探してきていただけますか?』
『何故、俺が?』
『もうすぐ、夫婦となられるのですから…。少しは会話されたらどうです』
『あいつは全く納得していないようだが?』
『今はまだ、混乱しているだけ。じきに落ち着くと思います』
『……で、あいつはどこに行ったか検討はつくのか?』
『ええ……』
狭井君との会話は、アシュヴィンにとって少々不快だ。
何しろ喰えない人間だ。
千尋は全く気がついていないが、明らかに何かしら企んでいる。
今回の結婚に対しても、何かしらの思惑がある筈だ。
「まあ……。それが普通だがな」
王族の結婚は何かしら、政治的な思惑が絡み合う。
アシュヴィンだってそうだ。
今回の結婚で、中ツ国や他の勢力をあてにしようとしているのだから…。
その中で、傷つく人間がいようとも……。
気がつくと、アシュヴィンは大分森の奥まで来ていた。
そしてある場所に、光が差し込んでいる。
何となくその場所に千尋がいると思い、先を急ぐ。
その光の先には……。
「しかし……、あいつはこんなとこで一体何を……」
アシュヴィンが辿り着いたのは、森の奥にある泉。
だが、そんな事よりもアシュヴィンの目に映ったのは……。
「……っ!!」
1人の少女が小さな滝で、水を浴びている。
その姿は、何か神聖なものを感じた。
まるで、神にその身を捧げているような…。
その光景に、アシュヴィンは息を呑んだ。
何も考えられず、身体も固まって動けずにいた。
「ん?」
不意に視線を感じ、千尋はその方向に振り向く。
するとそこには、先ほどまで考えていた人物がそこにいた。
「っ!!……あ…アシュヴィン…!!」
千尋はアシュヴィンの姿に驚き、また今の自分の状況を思い出した。
その視線から逃れるように、千尋は背を向いてしゃがんだ。
泉の水は浅くて、身体を全て隠す事が出来ない。
しかし、何もしないよりはマシだった。
「龍の姫がこんなところで水浴びか?」
「なっ。何でアシュヴィンがここに…」
せめて、自分から意識を遠ざけようとアシュヴィンに投げかける。
「狭井君から、お前を探すように言われてな。この辺りだと聞いて…来た」
「え……?狭井君は私がここにいる事…、知ってる筈なのに」
何故だろうと首を傾げる千尋に、アシュヴィンは苦笑した。
「さあな。お前に触れて来いって事なのかもしれないぞ」
「なっ…!!そんな事!!」
案の定、千尋はすぐにそれを否定した。
(俺が千尋に手を出して、既成事実でも作らせる気か?)
あり得ない話ではない。
子供を作る事は、次の国の運命を決める。
そしてそれが権力があればあるほどに、国のためにはいい。
その子供に、中ツ国と常世を治めさせようと、目論んでいるのかもしれない。
「まあ、そんな気は俺にはないから安心しろ」
「ほんとに?」
「ああ」
さすがに、明らかに初心な少女を、手を出すのには気が引けた。
しかし簡単に安心されるのも、アシュヴィンとしては面白くない。
「だが、そのままの格好でいられる俺も気が変わるかもしれんな」
「!!」
その言葉に千尋の身体が少し動き、固まったのがアシュヴィンにもわかった。
そんな千尋に苦笑しつつ、アシュヴィンは……。
「こちらを向いているから、さっさと着替えろ」
「え……?」
その言葉は千尋にとっては、予想外だった。
「あの…。アシュヴィン?」
「それとも期待通りにしてほしいのか?」
「着替えます!!」
即答する千尋に笑いながら、アシュヴィンは泉に背を向けた。
「み……見ないでね」
「わかったから、とっとと着替えろ」
「う……うん」
その言葉通りに、アシュヴィンは背を向けたまま動こうとしない。
そんなアシュヴィンの様子を見ながら、千尋は動き出す。
―――ザバッ。
「……」
正直、アシュヴィンは困っていた。
水音が聞こえる。
それは千尋が、泉から上がった音。
衣擦れの音が聞こえる。
それは千尋が、着替えている音。
何も会話をしていないせいか、嫌でも耳に音が入ってくる。
(困ったものだ……)
こういう時、自分が『男』だという事を思い知る。
千尋にも少しは、意識して欲しいものだ。
「あの……、アシュヴィン。終わったよ」
「そっち向いてもいいか」
「え…ええ」
わざわざ確認してくるのは、アシュヴィンの優しさだ。
その優しさが、千尋の胸にしみる。
「しかし、こんなところに1人で来るとは感心しないな」
「っ!!」
もし自分以外の男が、ここに訪れたらどうする気なのか?
「何されても、文句は言えないんだぞ」
「!!!」
その言葉に千尋は顔を紅くし、俯いてしまう。
(確かに、アシュヴィンの言う通りだ)
以前も忍人に言われたばかりだというのに、再び繰り返している。
「ごめんなさい……」
「お前が素直に謝るとはな」
「だって、1人で考え事したかったんだもの」
「考え事?」
「うん……。これからの事とか……結婚の事とか」
「成る程な」
目の前にいる少女は、明らかに今回の結婚に戸惑っている。
頭では王族としての立場を理解しているだろうが、心はまだ未熟な少女と言ったところか。
「お前は俺との結婚に大変、不満なようだな」
「え……」
アシュヴィンの言葉に、千尋は驚きを隠せない。
千尋はアシュヴィンをどう思っているか、わかっていないのだ。
不満なのか、そうでないのかが…。
そんな千尋を見透かしたかのように、アシュヴィンは笑う。
「まあ、いいさ。今は、な」
「?」
「とりあえずは、王族としての役目を果てしてくれればな」
「わ……わかってるわ」
その物言いに、千尋は少しムッとした。
甘い言葉すら紡ぐ事もせず、アシュヴィンはその場を立ち去る。
「もーー、何なのっ」
千尋はアシュヴィンの姿を見つめたまま、動けずにいた。
「今は……まだダメだな」
立ち去ったアシュヴィンは、ポツリと呟いた。
その脳裏には、先程の千尋の水浴びの姿が浮かぶ。
あの時、ただ息を呑んだ。
その姿に見惚れて……、動く事が出来なかった。
特にいやらしい感情も浮かばなかった。
そこにあったのは、千尋を綺麗だと思った。
ただ、それだけで。
それはまるで、天女や神の遣いにしか思えなかった。
次に我に返った時には、その少女を自分の物にしたいと思った。
先程までの姿とは違い、可愛らしくて、そして「女」である千尋の事を…。
けれど、それは思いとどまった。
今までだったら、その場で自分の物にしてきただろう。
だが千尋はまだ、自分の気持ちを理解していない。
アシュヴィンは、千尋の『心』も手にいれたいのだ。
「俺も……、大概馬鹿だな」
アシュヴィンは自嘲して笑う。
「だが、必ず手にいれる……」
そう決意しながら、アシュヴィンは来た道を戻っていった…。
~fin~
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プロフィール
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文月まこと
性別:
女性
自己紹介:
乙女ゲーム・八犬伝中心に創作しています。萌えのままに更新したり叫んでいます。
同人活動も行っています。
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