乙女ゲーム・八犬伝などの二次創作のごった煮ブログです。
バッドED。苦手な方は注意してください。
「お前は一人帰れ」
「アシュヴィンッ!?」
皇たちの軍に追われ、篭城にも限界がきた頃。
アシュヴィンは千尋を連れ出した。
そして比良坂で千尋に逃げるように言い出したのだ。
「頼むから聞きいれてくれ」
無理をして笑うアシュヴィン。
それは祈るような願い。
「な……んで」
「言ったはずだ。俺はお前を死なせたくはない……」
「アシュヴィン……」
「俺の望みはお前が生き延びることだ」
「私……は…」
その言葉で千尋には全てがわかってしまった。
アシュヴィンはもう決めてしまっている。
千尋と別つ道を。
他に何か言わなくてはいけないのに……、何も出てこない。
言葉の代わりに熱いものがこみ上げてくる。
「泣くな……」
「もう一つだけ……わがままを言っていいか?…微笑んでくれないか……一度だけでいいから…」
それは、唯一の願い。
未練がましく、千尋への想いを断ち切れずにいる。
「…ん。……うん」
千尋は必死にその言葉に応えようと、無理やり笑顔を作った。
それが今出来る、千尋の精一杯だったから。
アシュヴィンがそっと目元を拭い、優しく微笑む。
「綺麗だな……。最初に出会った時から、なぜかお前が好きだった」
アシュヴィンが口にした、最初で最後の告白。
そしてそれは、静かに消えていく。
「……ありがとう」
アシュヴィンはそう言うと、背を向けて黒麒麟の元へ。
千尋は、ただその光景を見る事しか出来ない。
「あっ…!!」
間もなく、アシュヴィンは黒麒麟に乗って去っていく。
その姿は段々と小さくなっていく。
心に残ったのは、後悔と悲しみ。
そして、ようやく理解する。
「……っ!!」
千尋はその場に崩れ落ち、溢れる涙が止まらなかった。
「わた…しも……。好き……だったのに…」
千尋が自覚した時には、すでに遅すぎた。
その想いの相手とは、二度と会えないのだから…。
アシュヴィン1人が砦に帰った時には、リブが待っていた。
「帰って来られたんですね」
「当然だろう」
「そのまま……、逃げてくれる事を願っていました」
「馬鹿言うな。兵を捨てるわけにはいかない」
「殿下……」
すぐ近くに幸せがあるというのに、アシュヴィンは進んで苦難の道を行く。
リブにはそれがわかって、重い息を吐いた。
「本当に不器用な方ですね」
「……」
「殿下は二ノ姫の事を深く愛していらしたのに……、それも伝えずに…」
「今では言わなくてよかったと思っている。これからのアイツには必要がないからな」
アシュヴィンの脳裏に、先ほどの千尋とのやり取りが浮かぶ。
涙を流し、それでも無理してアシュヴィンのために笑う。
―――先ほどの言葉は、闇夜に消えていればいい。
―――そして俺だけに見せてくれた笑顔。
それだけで、もう……充分だ。
これから千尋の行く末に、笑顔があふれていればいい。
たとえ……、俺が隣にいなくても……。
~fin~
PR
この記事にコメントする
プロフィール
HN:
文月まこと
性別:
女性
自己紹介:
乙女ゲーム・八犬伝中心に創作しています。萌えのままに更新したり叫んでいます。
同人活動も行っています。
同人活動も行っています。
pixiv
カテゴリー
リンク
カレンダー
カウンター
ブログ内検索