乙女ゲーム・八犬伝などの二次創作のごった煮ブログです。
「その想いの果てに」「愛を知ったその先に」の続き。完結編。
―――答えはきっと、ただ一つ。
「き……来てしまった」
夜がさらに更けた頃、千尋は再びアシュヴィンの部屋の前へと来ていた。
ほんの数時間前までは、すぐにノックする事が出来た。
だが今は、それすらも出来ない。
「ダメだわ。それでは来た意味がない」
千尋は大きく深呼吸をして、そのままノックをした。
―――コンコンッ。
「何だ。今頃」
アシュヴィンは、未だ眠れずにいた。
千尋が訪ねて来る前も千尋の事を考えて。
部屋に送った後も千尋の事を考えていた。
会えた事で、苛つきは治まったものの、逆に募ったのは愛しさ。
その笑顔を見るだけで、自分の想いが癒されていく。
そんなことを考えながら、アシュヴィンは起きていた。
深夜の訪問者に驚きながらも、急用かと思い、その身を起こした。
その扉を開けると、アシュヴィンは息を呑んだ。
「……一体なん…だ。……千尋」
そこにいたのは、先程部屋まで送った妻がいた。
「え…と。来ちゃった」
「来ちゃったって、お前……」
流石のアシュヴィンも驚きを隠せない。
訪問者が千尋であった事と、先程の事もある。
一体、千尋は何しに来たのだろうか…?
「とりあえず、入れ。もう夜も遅いからな」
「うん……」
遅い時間に話をしているとわかれば、臣下たちに迷惑になる。
仕方なしに、アシュヴィンは千尋を部屋へと招きいれた。
「で。どうした?」
「え…と」
「何かあってまた来たのだろう?」
「うん……。そうなんだけど」
アシュヴィンのベッドに腰掛けている千尋は、先程から俯いている。
何か言いたそうだが、それを伝え切れずにいた。
「千尋?」
アシュヴィンとしては、早く決着をつけて欲しいところだ。
この状況がアシュヴィンとしては、まずい。
夜に寝室に2人きり。
その傍らにいるのは、愛する妻。
その状況だけで、アシュヴィンはどうにかなりそうだ。
はっきりしない千尋に、アシュヴィンが切り出した。
「千尋。先程俺が言った意味、わかってるんだろう」
「……うん」
「なら、何故ここに来た?」
「あの、あのね」
「ん?」
「……っ」
「落ち着け。ゆっくりでいい」
アシュヴィンは千尋を怖がらせないため、少しでも優しく努める。
そのアシュヴィンに優しい微笑みに、千尋は泣きそうになった。
千尋はアシュヴィンの服の裾を掴み、ようやく口に出した。
「私、アシュヴィンの事、好きだよ」
「………何だ、急に…。って何泣いてるんだ!!」
「だって……私…。私……何もわかってなかったから……」
「千尋…?」
「アシュヴィンが望んでた事、ちゃんとわかってなくて。私が子供だったから……」
泣き出してしまった千尋に、アシュヴィンはそっと抱きしめた。
「だから、待つって言ったんだろ。お前の気持ちがそうなるまでな」
「……!」
アシュヴィンは再び、千尋に優しい。
その優しさが千尋にとっては、悲しくなってくる。
自分がこんなにも彼に気を遣わせていた事に。
「アシュヴィン……」
「!!……千尋っ」
千尋はその名を呼び、そっと唇を重ねた。
それは珍しい千尋からの口付け。
その行動にアシュヴィンは動揺した。
その様子を見て、千尋の心も少し和んだ。
「ば…馬鹿。何で今こんなこと……」
「したかったから……だよ」
「千尋?」
「今、アシュヴィンと……したいって……思ってるんだよ」
ようやくアシュヴィンはわかった。
千尋がここに来た理由を。
「はーーーーーーーーーーーー」
アシュヴィンは深い息を吐いた。
「あ、アシュヴィン?」
「お前な。そんな事言われたら……」
「言われたら?」
「止まらなくなる」
「!!…んっ」
アシュヴィンは千尋の身体を引き寄せると、すぐに口を塞いだ。
先程の千尋の口付けとは違い、深いもので。
「んっ……。ぅ……」
その激しい口付けは千尋の力を奪っていく。
―――トサッ。
気がつけば、千尋はベッドへと押し倒されていた。
千尋が見上げる先には、アシュヴィンの顔。
千尋の顔の脇には、アシュヴィンの手があった。
それはまるで、逃がさないとでも言うような。
「アシュヴィン?」
「もう一度だけ聞く。逃げるなら今だぞ」
「……逃げないよ。だから…」
今でも、千尋に逃げ道を作ってくれるアシュヴィンが優しい。
それでも、千尋は目を逸らさずに、自分からアシュヴィンの首に腕を絡ませた。
「あなたの事、教えて」
「わかった」
アシュヴィンは、それに応えるかのようにそっと口付けていた。
「っ……」
その口付けの中で、アシュヴィンは千尋の服を脱がせていく。
「あ……っ。ん……」
羞恥に声を出そうとすれば、その唇で塞がれる。
千尋の些細な抵抗もアシュヴィンには、堪えない。
「どうした?」
「は……恥ずかしいから……。見ないで」
恥ずかしさからか、どうしても言わずにはいられない。
アシュヴィンはそんな千尋には、余裕の表情で笑う。
「無理だな。もっと、よく見たい」
「っっ!!!」
「こんなに綺麗なのだからな……」
「嘘……」
「嘘じゃない。この白い肌も、この身体も、それにお前の顔が紅く染まるのも……全部見たい」
「!!」
月明かりの中で、アシュヴィンの前に全てさらけ出していた。
その千尋の全てをアシュヴィンは、優しく触れる。
「千尋…」
「………っ!!」
アシュヴィンの熱が、千尋を溶かしていく。
千尋はその熱に耐えながらも、アシュヴィンの声を聞いた。
「千尋。愛してる」
「……っ」
千尋は何も言えずに、代わりに涙だけが流れた。
その涙をアシュヴィンが優しく拭う。
その動作にまた、泣きたくなった。
覚えているのは、アシュヴィンの熱さと痛みと、優しい声だけだった。
「……んっ」
千尋は、窓から差し込む陽射しで目が覚めた。
瞼が少し重いのと、身体がだるく感じる。
「……っ!!」
千尋はその光景に思わず、叫びそうになった。
目の前には眠っているアシュヴィンの顔。
身体はアシュヴィンによって、拘束されている。
そして2人とも裸のままだった。
それにより、昨夜の事が鮮烈に思い出されていく。
(そうだ…!!私、アシュヴィンと……)
アシュヴィンに抱かれて、解放されたのはいつだったかも覚えていない。
気がつけば、アシュヴィンに全てを委ねていた。
(思い出すと、私とんでもない事言った気がするし……)
その光景を思い出すだけで、千尋の身体が熱くなっていく気がする。
(それにしても……整った顔……だな)
千尋は隣に眠るアシュヴィンの顔を、改めて見た。
その目は閉じられていて、眠っている姿でさえ見惚れてしまう。
(何か、得した気分!!)
こんなアシュヴィンを知っているのは、千尋だけだ。
その事実に自然と顔が綻ぶ。
「あっ。でも、今日も仕事だっけ。起きないとまずいかも……」
それどころか、自分の部屋は今は誰もいない。
采女が探しに来て、こんな姿を見られたら……。
「起きなきゃ…」
千尋はアシュヴィンの腕から何とか逃れ、その場から離れようとする。
だが……。
「ひゃ……」
その手は急にベッドへと引き戻された。
「一人で勝手に起きようとするは、随分冷たいんだな」
「あ……アシュヴィン!!起きてたの? 」
「隣で動いてれば、自然と起きるだろう。それに急に温もりがなくなったしな」
その温もりを手放さないために、アシュヴィンは力を込める。
「アシュヴィンっ。ダメだよ。もうすく采女が来ちゃうし、私の部屋も私がいないから探しちゃうし」
「大丈夫だろう」
慌てないアシュヴィンに、千尋は焦る。
「何でよーー」
「半刻前、リブに伝えたしな」
「え……」
「お前が眠ってた頃、リブが声をかけてきた。もちろん扉越しでな。内容はお前の行方だ」
「そ……それって」
「とっくに、お前が部屋にいないのが采女に知れて、リブに聞いたんだろうな。リブはその辺は察しがいいから、扉越しで聞いてきた」
「皆に、バレてるってこと?」
「そういうことだ。夫婦でいるのがわかって、邪魔する奴はいないだろう……それに」
アシュヴィンは、不敵に笑う。
「それに?」
「それに、まだ足りないんだが」
「!!」
「今日はせっかく2人とも休みにした事だしな」
「ちょ……。私は無理だからね」
アシュヴィンの言葉に、千尋は慌てる。
流石にこれ以上は千尋の身体が持たない。
そんな千尋を見て、アシュヴィンは笑う。
「……っ。からかったの!!」
「いや、俺としてはどっちでもいいんだが。そういう反応が面白くてな」
「もーーーー」
「悪かった。機嫌直せ」
これ以上、からかうと喧嘩になりかねない。
「でも、休みは本当だ。だから、のんびりするか。2人で」
「そうだね」
アシュヴィンはジッと、千尋の顔を見つめる。
「アシュヴィン?」
「いや、朝起きて一番に見るのがお前だといいと思ってな」
「あ……」
「その顔と……それに身体もな」
「…っ!!」
千尋は自分の姿が未だ裸だという事を、ようやく思い出した。
「馬鹿ーーっ」
千尋は掛けていた布団の中へと潜り込んで、身を隠す。
「今更……。昨日はあんなに」
「それ以上言ったら怒るよ!!」
アシュヴィンはそれ以上何も言わなかったが、笑っているのがわかる。
それに応じて、千尋は拗ねるばかりだ。
「俺が悪かったから、出て来てくれ。これだと口付けも出来ない」
「もー知らない!!」
「千尋……」
本当はもっと怒っていたいが、場所が場所だけに諦める。
「…………もっと、優しくしてくれたら」
「わかった。約束する」
「本当に?」
「ああ」
その声に負けて、千尋は顔を出した。
結局はアシュヴィンには弱いのだ。
「それにまだ言ってないだろう」
「?」
「おはよう、千尋」
「あ…。おはよう……アシュヴィン
千尋は朝の挨拶を交わせた事に、嬉しさを感じた。
2人の1日はまだこれから、始まる……。
~fin~
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文月まこと
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女性
自己紹介:
乙女ゲーム・八犬伝中心に創作しています。萌えのままに更新したり叫んでいます。
同人活動も行っています。
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