乙女ゲーム・八犬伝などの二次創作のごった煮ブログです。
ED後。ある雨の日に…。
「今日も……雨か」
千尋が窓の外を見ると、空は暗く、雨が降り続いていた。
ここ数日、1日中雨が降っている状態だった。
ちょうどこの時期は、雨季の季節だと話には聞いた。
仕方ないとはいえ、こうも毎日だと気が滅入る。
ぼんやりと窓を見ている千尋の傍に誰かが近づいてくる。
だが、千尋にはそれが誰だかはわかった。
「よく飽きないな」
「アシュヴィン……」
「暇さえあれば、ずっと見ているだろう」
「そんなことないけど……」
だがアシュヴィンの言う通りで、千尋は時間を見つける度に窓に視線を送る。
意味などなく、ただ見ているだけ。
アシュヴィンはそんな様子の千尋の行動が、意味がわからなかった。
「意味はないんだよ。ただ何となく」
「ほう……。てっきり物思いに耽ってるのかと思っていたが……」
「深い意味はないの。ただ雨が降ってるなぁって」
「それはそうだろう」
何を今更とアシュヴィンが呆れているので、千尋は言葉を付け足した。
「今まではあんまり考えていなかったけど、こうして雨が降っている事はすごい恵まれているって思ったの」
「…………確かにな」
今までの常世は、枯れ果てた大地で空には黒い太陽が浮かぶ。
アシュヴィンはいつしかそれに慣れ、豊かな日々を忘れかけていた。
それを取り戻したのは、隣にいる自分の妻だった。
千尋の言葉に、アシュヴィンは忘れかけていた事を思い出させる。
「こうして自然の恵みを受けているのは、当たり前ではないんだな」
「うん……」
今では平和になったから気にも留めていなかった。
「だが、この日常を守っていくのがこれからの仕事だ」
「そう……だよね」
アシュヴィンの言葉に頷き、千尋は窓を閉めた。
「ところで千尋……」
「ん?」
「そろそろ髪を結ってくれないか?」
「……っ。アシュヴィン……」
「笑うな」
「やっぱり、雨が降ってるとやりづらいんだね……」
「…………」
アシュヴィンは何も答えず、千尋に背を向けた。
その様子に千尋は口元が緩んでしまう。
「……千尋」
「はいはいっ」
アシュヴィンに促され、千尋は髪を結い始めていた。
~fin~
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文月まこと
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自己紹介:
乙女ゲーム・八犬伝中心に創作しています。萌えのままに更新したり叫んでいます。
同人活動も行っています。
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