乙女ゲーム・八犬伝などの二次創作のごった煮ブログです。
ED後。アシュヴィンの帰りを待っていた千尋は…。
「アシュヴィン……、まだかな」
千尋はぼんやりと外を眺めていた。
外は薄暗く、今にでも雨が降りそうだった。
ここ数日アシュヴィンは、遠方に出かけていて帰ってこない。
時間が過ぎるたびに、不安は募っていく。
「前は……、こんなんじゃなかったのに」
アシュヴィンと少しでも離れているだけで、寂しくなってしまう。
夫婦となって、アシュヴィンのことを深く知って。
知れば知るほど、好きになって…。
好きになればなるほど、離れると不安になる。
気がつくと千尋は、窓から外へ出ていた。
それは、いち早くアシュヴィンの姿を見つけようとする、切なる行動だった。
「今日は……確か西のほうだったっけ」
今日アシュヴィンが行った国は、戦の時に協力してもらった国だ。
そのときのお礼と、これからの友好関係のために赴く。
「うーーーーーーーーん」
大切な役目とはわかっていても、感情は別物。
「私……。弱くなっちゃったな」
アシュヴィンの事だけで、心が揺れる。
それだけの想いを今まで知らなかった。
「アシュヴィン……会いたいよ」
その呟きは、殆ど掻き消された。
大量の雨が、降ってきたからだった。
その雨は激しく、周りの音を遮断する。
千尋がいる場所は屋根がないため、激しい雨は千尋に降り注ぐ。
だが、千尋はその場所から一歩も動けずにいた。
雨が少し、和らいだ頃。
そのまま、どれくらいの時間が経ったのかはわからない。
そんな中、千尋の耳に届いたのは……。
「ーーー千尋!!何やってるだ、お前は」
「あ……アシュヴィン」
千尋が気がつかないうちに、アシュヴィンは帰って来ていた。
そしてずぶ濡れの千尋の様子に、声を荒げる。
アシュヴィンを見ると、些か濡れている。
雨の中、帰ってきたのだろうか?
そんなことを千尋は、ぼんやりと考えている。
「……千尋?どうした…」
「帰ってたんだ……」
「ああ。それなのに、お前がこんな雨の中外に出ているから、驚いた」
アシュヴィンは、自分の外套を千尋に被せる。
気休めだったが、これ以上妻の身体を冷やさないためだ。
「千尋…?」
千尋は何も応えず、そのままアシュヴィンにしがみついていた。
「お帰りなさい」
そう、小さく呟いて。
「…ただいま」
アシュヴィンは、それ以上何も言わず千尋を抱きしめていた…。
「身体が大分冷えてるな…」
「あっ!!ごめん…。濡れちゃうね」
そう言って、千尋が身体を離そうとする。
だが、アシュヴィンはそれを許さない。
「そんなことはいい。こんなに濡れるなんて、いつからここにいたんだ?」
「わからない……」
千尋は、その時の状況をよく覚えていない。
ただ、必死だった事しか。
「まあいい、中に入るぞ。このままでは風邪を引く」
「うん……」
「しかし……」
「?」
アシュヴィンは、どこか楽しそうに笑っている。
「お前がそんなに寂しがりだったとはな」
「!!そんなこと」
真っ赤になる千尋に、アシュヴィンは手をって口付ける。
「こんなに冷えるまで、俺を待っていたんだろ?」
「!!」
身体は冷えている筈なのに、アシュヴィンの言葉と行動で熱くなっていく。
「だったら、責任をとらないとな」
「あ……!!アシュヴィンッッ!!」
気がつくと、千尋はアシュヴィンの肩に乗せられ、抱えられている。
そしてそのまま、動き出す。
「ちょっと、アシュヴィン!!どこ行くの!!」
「身体が冷えてるんだから、湯浴みに決まってるだろう」
「それなら、自分で行くから。下ろして」
「馬鹿だな。2人で行くから意味があるんだ」
その言葉で、アシュヴィンの行動の意味がわかってしまった。
「ちょ!!だめっ。下ろして」
「却下だ。心配させた罰もあるし。それに、お前が寂しがらないようにしてやる」
「!!」
千尋は何も言えず、固まってしまう。
「………馬鹿」
千尋はそれだけを呟いて、抵抗をやめていた。
せめて、顔が見られないのが救いだった。
「ふっ。言ってろ」
そしてそのまま、一つの部屋へと入っていた。
~fin~
PR
この記事にコメントする
プロフィール
HN:
文月まこと
性別:
女性
自己紹介:
乙女ゲーム・八犬伝中心に創作しています。萌えのままに更新したり叫んでいます。
同人活動も行っています。
同人活動も行っています。
pixiv
カテゴリー
リンク
カレンダー
カウンター
ブログ内検索