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乙女ゲーム・八犬伝などの二次創作のごった煮ブログです。
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千尋は水浴びをするために出かけたが…。



「うーーーん。暑いかも」

今日は少し、気温が高いような気がした。

元々熊野は、普段から気温が高い。

そして千尋は、弓の鍛錬中でもあった。

「流石に、今日は終わりにしようかな」

だが暑さのせいか、服がべったりと身体に張り付いている。

「そうだ。確か森の奥に泉があったよね」

以前も身体をすっきりさせるため、水浴びを泉でしたことがあった。

その事を思い出すと、水浴びが魅力的になってくる。

「よし、決まり」

千尋はそう決意し、泉へと向かった。



「こっちはやっぱり涼しいかもっ」

森に入ると日差しが隠れて、少し温度が下がった気がする。

「確かもうすぐだよ…ね」

千尋は記憶を頼りに、その場所へと向かう。

目指す方向から水の音がしたので、確信に変わる。

「よしっ!!着いた」

千尋は、光が差す方へと到達した。

その場所には以前とは変わらず、確かに泉があった。

「………え……」

けれど、千尋はその場所から動けなくなってしまった。

泉の真ん中には、既に先客がいた。

その姿は、何故か異様なまでの美しさを放っている。

千尋が固まっていると、相手が気づいた。

「ん……?…お前か」

「あ……アシュヴィンッ!」

それは先日までは敵であり、今は味方であるアシュヴィンだった。

「何だ。お前も水浴びしに来たのか?」

「!!っ」

千尋はようやく今の状況を思い出し、アシュヴィンに対して背中を向ける。

「なっ、何やってるのよ!!」

「水浴びに決まってるだろう」

「何で裸なのよっ!」

「服を着たままで、泉に入る奴はいないだろう」

アシュヴィンの言葉は正論なのだが、千尋は動揺して上手く頭が回らない。

(何で、こんなに恥ずかしいの)

最初にアシュヴィンを見た時は、驚いて動けなかった。

だが、意識してしまうと一気に千尋の体温が上がる。

おかげで、今はアシュヴィンの事が直視出来ない。

そんな千尋に対し、アシュヴィンは…。

「……お前。敵であった俺に、簡単に背を向けていいのか?」

「!!…今は敵じゃないでしょ。それにアシュヴィンだって……」

「俺が?」

「アシュヴィンだって、武器も持たずに水浴びしてるじゃない。危機管理がないわ」

これは以前の自分が、忍人に言われたことだった。

「ふっ……。だったら試してみるか?」

「え…?」

「武器も持っていない今の俺なら、お前でも簡単に倒せるんじゃないのか?」

「なっ…何でそんな事っ」

「お前がそういうのなら、俺に傷の1つでも作ってみろ。俺を敵としてな」

「!!!」

明らかに自信満々で言うアシュヴィンに、千尋は少し腹が立つ。

「いいわ。わかった」

「やってみろ」

千尋は弓をアシュヴィンに構える。

(今のアシュヴィンなら…)

そう弓をアシュヴィンに引いた瞬間―――。



――ザバッ

「!!」

アシュヴィンの姿が一瞬で消えた。

「え!?」

向けた弓は、泉へと消えていく。

(嘘ッ。泉に潜ったのっ)

これでは、アシュヴィンがどこにいるか見当がつかない。

そんな事を逡巡していると、一気に千尋の身体が傾いた。

「隙ありだな」

「!!!」

気がつけば、アシュヴィンが千尋の身体を押し倒している。

そしてアシュヴィンは、千尋の両手を片手で押さえ、身体は覆いかぶさっている。

これでは完全に身動きが出来ない。

「な……何で」

「これくらいの事は、出来て当然だ」

「!!」

アシュヴィンに指摘され、千尋は圧倒的な力の差を思い知った。

「こんな状況で、お前は不利だな」

「どういうこと…?」

「今のお前は俺に何をされても、文句が言えない」

「……っ!!」

アシュヴィンに指摘され、途端に千尋は怖くなった。

今のアシュヴィンの姿は裸で、千尋は身動きが出来ない。

それは、アシュヴィンがいつ、自分を襲ってもおかしくはないのだ。

「それも楽しいかもな」

「…!!」

アシュヴィンが千尋を解放するなど、甘い考えだった。

その視線は、明らかにいつもとは違う。

本当なら泣き出したい気持ちで、いっぱいだ。

けれど…。

(今、私の目の前にいるのは……。敵!!)

千尋はアシュヴィンの目線から逸らさず、じっと見つめる。

「どうした?助けを請わないのか」

「私は……、あなたに屈服しないっ。例え身体が支配されようとも、心までは……」

「…………」

アシュヴィンは、何も言わずにただ千尋を見つめる。

千尋は一向に視線を逸らさずに、アシュヴィンを見つめた。

(まいったな……)

てっきり、千尋は泣き喚くのだと思っていた。

そして自分を嫌うのではと……。

それなら、自分のものにしてしまおうとも…。

けれど、千尋は最後まで足掻く。

力の差があろうとも、決して諦めない。

本当は怖いはずなのに。

「くっ……」

「なっ。何がおかしいのよ」

「流石は、二ノ姫…といったところか?」

アシュヴィンはその手を解放し、身体を起こした。

「アシュヴィン…?」

「俺は、無理強いは好きじゃないからな」

「……」

アシュヴィンの雰囲気が変わった事に、千尋は安堵する。

そして、自分の甘さを思い知った。

「これが敵なら、途中で止めてくれないぞ」

「ええ……。わかったわ」

千尋はその身に受けて、ようやく事の重大さに気づいた。

油断が時には致命傷になる。

それをアシュヴィンによって、気づかされた。

「これに懲りたら、少しは自覚しろ」

「うん……」

アシュヴィンの言葉は厳しいが、正しい。

千尋はアシュヴィンを見つめる…が。

「!!…さっさと服を着てっ」

「何だ今頃…?」

「いいから!!」

千尋はようやく、アシュヴィンが裸である事を思い出した。

だが先程の事もあり、背中を向けるのは躊躇った。

紅くなる千尋に、アシュヴィンは呆れる。

先程の勇ましさは、どこに消えたのか、と。

「仕方ないな…。あっちを向いてろ」

「う…うん」

千尋は再び、アシュヴィンに背中を向けた。

アシュヴィンの衣擦れの音に、千尋は動揺しながらも、会話を続ける。

「全く、よくわからない女だな」

「だって…。普通は無理だよ」

「男の身体を、見た事がないんだろう?」

「!!」

人を馬鹿にしたようなアシュヴィンに、千尋はムッとした。

思わず、反論してしまう。

「別に、無い訳じゃないわ」

「………………」

その言葉は嘘じゃない。

実際、風早と那岐とは幼い時から一緒に暮らしていたし、現代でも体育とかプールとかで、そういう場面はあった。

だが、アシュヴィンがそれをわかるはずもなく…。

「そうか。それは面白くないな」

「え……?」

アシュヴィンは、千尋の身体を自分に向けさせる。

「な…何っ?…んんっ……」

そして一瞬の隙をついて、その唇を塞いだ。

「ふっ……。んっ…。」

千尋はその口付けから逃れようとするが、アシュヴィンの腕がそれを許さない。

千尋もまた、強く抵抗は出来なかった。

そしてようやく解放される。

「い……いきなり…何…?」

「口付けは初めてだったか?ん?」

「!!!」

千尋は何も言えずに黙り込み、アシュヴィンはその様子を見て満たされた。

「ば……馬鹿っ」

「くっ……。お前は本当に面白い奴だな」

顔を紅くする千尋に、アシュヴィンはただひたすら笑っていた。

そんなある1日の出来事。



~fin~

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乙女ゲーム・八犬伝中心に創作しています。萌えのままに更新したり叫んでいます。
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