乙女ゲーム・八犬伝などの二次創作のごった煮ブログです。
ラブコレの原稿が終わったので、次の新刊の内容を考えてます。
ゆきさくらでは出来れば左之さんの話も書きたいと思っているので・。
ネタとしては
・SSLでラブラブ
・本編ですれ違い
・ED後でラブラブ
と大まかなネタしか・・。
何せ1年以上のブランクが空いてますからね・・。
忘れてますよーーーー。
どうしたもんか・・。
ゆきさくらでは出来れば左之さんの話も書きたいと思っているので・。
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サイトをブログ中心へと変更しました。
今まで上げた話も一括で見やすいかと思います。
編集する時にこちらのほうがやりやすいかなぁーーと。
あと、ラブコレ新刊もアップしております。
通販の方も書店様からの返答も頂き、
朝霧新刊は2月入ってから、ラブコレ新刊はイベント後に
納品されます。
よろしくお願いします。
今まで上げた話も一括で見やすいかと思います。
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よろしくお願いします。
秋庭×真奈
「あ……雨だっ」
真奈は空の様子に気づき、急いでベランダへと向かう。
最近では雨が続いていたが、久しぶりに空は晴れた。
だが、その天気も長くは続かなかった。
せっかくの溜まった洗濯物を干すことが出来たのに、濡らす訳にはいかない。
そう思い、目的の場所へと急いだ。
急いだものの、やはり少し濡れてしまっている。
その分、重さが少し増した。
「あと少しっっ」
物干し竿にかかっている分を取り込もうとするが、急いでいるため上手く取れない。
だが不意にかかっていた洗濯物が、動いた。
「ほらっ」
「高範さんっ」
いつの間にか帰っていた秋庭が、いとも簡単に洗濯物を取り込む。
それはやはり、真奈と秋庭の身長差だ。
秋庭は男の人でもわりと、長身の部類に入るだろう。
そんな秋庭を見つめていると、秋庭は怪訝な顔をしながら声をかけた。
「真奈、何やってんだ?もう終わっただろう。中に入れ」
「えっ…!!はいっ」
真奈は現実に戻り、部屋の中へと戻った。
改めて見る秋庭の姿は、結構濡れている。
「もう、高範さんっ。雨が降りやすいから傘を持ってって言ったのに」
「基地と家まで近いんだ。わざわざ持っていかなくても平気だろ」
「でも、風邪引いちゃいますよ?」
「そこまでやわじゃない」
「…………」
秋庭はいつもそうだ。
真奈に対してはいつもどんな変化も見逃さないのに、自分のことになると無頓着。
自分のことよりも真奈が最優先。
嬉しくないわけではないが、自分の身も大切にしてほしい。
「高範さん」
「あっ?」
真奈は秋庭の腕を掴むと、無理やりその身体を引っ張った。
「真奈?」
「…………」
真奈の足取りが大股なのと口を開かない様子から、怒っているのだとわかる。
そんな真奈の様子に、秋庭は黙ってついていくしかない。
真奈が連れてきた場所は、風呂場だった。
無理やりその場所に、秋庭を押し込める。
「おいっ?」
「ちゃんと温まるまで、出てきちゃだめです」
「そんな大げさにしなくても……」
「……」
「…………わかりました」
秋庭は反論しようとしたが、真奈の睨みに何も言えなくなった。
呆然としている秋庭をよそに、真奈は扉を閉めた。
あっという間に足音が遠くなっていく。
「ほんと……強くなったな」
真奈の言葉に、簡単に負けてしまう自分がいる。
以前だったら、言葉も行動も我慢している部分もあった真奈だが、今では違う。
ちゃんと自分の感情を伝えてくる。
それはとても嬉しいことなのだが……。
「とりあえず……、風呂に入るか」
真奈の言葉通りにしない場合の事を考え、秋庭はそれを実行に移すことにした。
~fin~
秋庭×真奈
朝の身支度のため、真奈は鏡の前に立っていた。
「うーーん、もう少し……」
「もう少し……なんだよ?」
「た……高範さんっ。いつからそこに?」
真奈の後ろから声が聞こえ、振り向くと秋庭がこちらを見ている。
背後に気づかなかったのと呟きを聞かれたので、真奈は少し動揺していた。
「少し前からだ。お前がぶつぶつ言ってるから」
「聞いてたんですかっ。もうっ」
「聞こえたんだ。ずっと鏡の前で何やってんだ?時間なくなるぞ」
「……考えてたんですよ」
「何を?」
真奈は少し言いづらそうに、言葉を続けた。
「私も、もう二十歳過ぎたのに、あんまり変わってないなって。
それで、もう少し大人っぽくなりたかったなぁーって思ってたところです」
「…………」
真奈の言葉に秋庭は何も言わず、ただ動いて。
――ビシッ。
「あいたっ」
真奈は攻撃された額を押さえて、秋庭を睨みつけた。
「もう、何するんですかっ!!何で、デコピン……しかも結構痛いし……」
「お前が鈍いからだ」
「何がです!!」
真奈は攻撃された理由が全くわからない。
「誰が教えてやるか。馬鹿」
「高範さんっ!!」
真奈は全くわかっていない。
無自覚にも程がある。
秋庭は少し頭が痛くなりそうだった。
真奈自身は全くわかっていないが、この数年で少し大人っぽくなった。
艶が出てきたというか、女らしくなった。
それはある意味、自分のせいでもあると秋庭は思っている。
だが、そう思うのは秋庭だけではなく、隊の中にも何人かいるらしい。
少しは自覚して、他の男の目を惹くのは勘弁してほしいのに。
真奈は全くわかっていない。
これでは自己防衛もままならない。
「大体、何でそんなに大人っぽくなりたいんだよ?」
秋庭は、話の矛先を変える。
突然話を振られて、真奈は慌てる。
「え……と。それは……」
「それは?」
「高範さんの隣にいても……は……恥ずかしくないように」
「…………」
真奈は秋葉との年の差を気にしている。
それはずっと変わらない10の差。
今までは、並んでも妹とか被保護者とかでしか見られなかった。
そうではなくて、秋庭の隣にいても違和感がない女になりたかった。
「真奈」
「はい?」
「お前は今で十分だ」
「たか……んっ」
秋庭は真奈を上に向かせると、その口を塞いだ。
突然のキスに驚きつつも、真奈は素直に受け入れる。
「やっぱり色々ずるいですよ。高範さんは」
「ずるいのはどっちだ」
真奈の言葉は時々、とんでもない力を持っている。
それが無意識なのが、恐ろしいところだ。
また、秋庭も不意に自分の心を揺さぶってくる。
明らかに経験の差がでて、真奈は少し悔しい。
けど、それでも結局は嬉しいのだと自覚していた。
「お前はそのままで十分…………いい女だよ」
秋庭はそう、真奈に囁いていた。
~fin~
秋庭×真奈
季節が夏を迎えると、昼夜問わずに暑い。
そして夜はそのせいで、とても寝苦しかった。
「ん……」
真奈は不意に目を覚ました。
外は暗く、寝てからまだそう時間は経っていない。
暑い日だと、どうしても眠りが浅くなる。
「暑いのか?」
不意に上から声が聞こえて、その声はただ一人しかいない。
「高範……さん?」
ぼんやりとする視界の中で、隣にいるのは秋庭とわかる。
「まだ夜明けまで大分ある。もう少し寝とけ」
「高範さんは?」
「俺ももう寝る」
そう言うと、真奈のほうへと風が吹いてきた。
それは自然の風ではなく、秋庭が団扇を自分に向けて扇いでるのだとわかった。
――そんなことしてたら、高範さんが眠れなくなるっ。
そう口にしたいのに、眠気が入り混じって思うように口に出来ない。
もしかしたら、自分が寝てる間も扇いでくれていたのかもしれない。
真奈が気にしていると、秋庭もそれに気づいたのかフッと笑った。
「さすがに扇風機とかあればよかったんだが、前にあったのは壊れてるし。新しく買えないしな」
「でも、涼しいから平気……です」
「ま、これくらいでちょうどいいのかもな。ほら、寝ろ」
秋庭がそう促すと、自然と眠気が襲ってくる。
「おやすみなさい」
「ああ。おやすみ」
真奈はそう口にして、心地よい風の中で眠りについた。
~fin~
秋庭×真奈
その気持ちを持て余してる。
――正直、何でこんなことになったのかわからない。
秋庭はぼんやりと、窓から外の景色を見ていた。
夜遅く、出歩く者などはいない。
いるとすれば相当の物好きだ。
塩害が進む世の中は、混沌としている。
治安は悪くなるばかりで、物資もままならない。
明日どうなるかわからない世の中で、秋庭はある少女と出会った。
ふすまを隔てて、寝息が聞こえてくる。
数ヶ月前から一緒に暮らすようになった少女・真奈は、自分にとって不思議な存在でしかない。。
恋人でも家族でもない、「他人」
お互いに必要以上には干渉はしない。
相手が踏み込んでいい時に、踏み込む。
それ以外には、何も言わない。
その関係が、妙に心地よかったりする。
秋庭自身も、それなりに女と関係を持っていたが、長くは続かなかった。
一時の快楽を求めて、後腐れなく、去っていく。
だが、真奈は違った。
秋庭と真奈の年の差から、そういう関係に陥ることは頭から考えていなかった。
「対象外」とでも言うべきか。
そう思っていたはずなのに…。
いつからか、真奈に関して心揺さぶられる自分がいる。
この心地よい空間をなくしたくない、自分がいる。
塩害で消える真奈をみたくない。自分がいる。
それはまるで……。
「馬鹿か……。俺は…」
秋庭は思わず呟いていたが、その言葉は暗闇と共に消えていった。
~fin~
秋庭×真奈
真奈は看護師の手伝いをしながら一日を過ごし、
秋庭もまた隊の育成や塩の撤去など忙しい日々を送っていた。
伊丹に来てから大分経ち、生活も落ち着いてきた。
だから、油断をしていたのかもしれない。
秋庭の手が真奈の額に触れ、そこから少し熱さを感じ取った。
見ると、真奈の顔色も悪い。
「少し熱があるな……」
「そんなこと……」
真奈はそう口にするが、身体は少しだるく感じる。
「今日は少し休んどけ。忙しく働いてたから、身体にきたんだろ」
「すみませんっ」
「ご飯は持ってくるから、医務室に行ったら休んでろ」
「はい……」
秋庭に心配をかけた申し訳なさから、真奈は思わず落ち込んでしまう。
だが、その頭を秋庭が優しく撫でた。
「お前はよくやってるよ」
「秋庭さん……」
「本当はついててやりたいんだが、悪いな」
「大丈夫ですっっ」
少し寂しい気もするが、秋庭の労わりの気持ちで充分だった。
「あ…。秋庭さんそろそろ時間ですよ?」
「……そうだな」
そう言うと、秋庭は真奈の目元にそっと口付ける。
「……っ」
「……真奈」
秋庭の顔が近づいてくる気配を感じた。
「秋庭さん、移りますよ」
「別にそれでもいいかもな」
「そしたら、秋庭さんの看病してあげます」
「頼もしいよ」
秋庭は笑って、そのまま真奈に口付けた。
触れるだけで、すぐにそれは離れた。
「行って来る」
「はい、いってらっしゃい」
真奈は秋庭の背中を見送ると、布団へ身体を突っ伏した。
「もー、秋葉さんの馬鹿」
熱だけではない身体の熱さを感じながら、真奈は少し休むことにした。
~fin~
秋庭×真奈。
―――彼はどう思っているのだろう?
私の事を。
塩害の結晶の破壊を終えてから数ヶ月。
世界は徐々に変わり始めている。
それを肌で感じているのと同時に、自分にも変化が訪れた。
立川の駐屯所の宿舎で、未だ秋庭と真奈はその場所にいた。
秋庭は陸自に戻り、真奈も自分に出来る事を行いながら、日々を過ごしていた。
一日が終わる頃、秋庭が部屋に戻ってきた。
その表情は少し、面倒な。
「真奈」
「秋庭さん、どうしたんですか?」
「今度は伊丹に行くことになった……」
「え……伊丹って?」
「関西のほうだ。しばらくはそこで体制を整える。結晶の処理もあることだしな」
「そう……なんですか」
秋庭が任されるという事は、それだけ大変な業務だということが真奈にもわかった。
「出発は明後日だ。準備しとけよ」
「はい……っ」
秋庭の言葉に、真奈は安心する。
自分も一緒にいてもいいのだと、改めて確信する。
相変わらず好きだとか愛してるとも、はっきりとした言葉はない。
だが、以前よりも、秋庭が真奈に対して雰囲気が柔らかくなった気がする。
自分の見当違いでなければ。
「ただ……な。道中結晶の処理状況を確認しなくちゃならない……」
「あ……」
秋庭の表情が途端に曇ったのは、真奈の身を案じてのことだった。
真奈は以前、結晶を集中的に見てしまっている。
その事を秋庭は気にしているのだ。
「悪いがお前には無理な要求をする。知らない場所に行く時は、目を閉じていろ」
「?」
「外にいる間は塩を見ないでほしい」
「秋庭さん……」
「俺が恐いからだ。俺が恐いから見ないでくれ」
秋庭は真奈に塩害の影響が出るのを、恐れている。
自分の前から、消えていなくなることをずっと恐れている。
こんな、完璧な、大人の男が。
だったら、自分が言うことはただ一つ。
「はい、わかりました」
真奈は秋庭に向かって、笑顔で頷いていた。
貴方のためなら、どんなことを強いられても大丈夫。
そんな意味をこめて。
「真奈……」
「あ……秋庭さんっ」
秋庭は真奈を自分の元へと引き寄せた。
その行動に未だに慣れない。
秋庭は真奈を上に向かせると、そっと口づけた。
「……っ」
唇から伝わる温かさに、心地よくなってきて。
秋庭は言葉の代わりに、唇でその想いを伝えている。
―――そんな風に思うのは、自惚れだろうか?
でも、その力強いの腕の中は、
真奈が一番安心出来る場所だった。
~fin~
夫婦。
郁と堂上は付き合い始めて、正月を一緒に過ごした。
それは隊内で気を遣ってくれた部分もあり、2人にとってとても幸せな時だった。
そして……今年は。
「篤さん……?」
「郁。起きたのか」
郁が目を覚ますと、堂上はすでに朝の支度を始めていた。
いつもながら、郁よりも先の行動をする。
郁も早く起きようとするのだが、睡魔には勝てずにいた。
また、堂上が郁をぎりぎりまで寝かしてあげようという事もあり、
郁は今日も堂上よりも後に起きていた。
「今日からまた、新しい1年だな」
「あ……」
堂上に言われて、郁は新しい年を迎えたことを思い出す。
「明けましておめでとう」
「おめでとうございますっ」
2人は自然と笑みが零れていた。
「夫婦になって、初めてのお正月ですね」
「そうだな」
「また、こうして挨拶が出来て嬉しいです」
「お前……」
「…?篤さん?」
「相変わらず、不意打ちだ」
可愛いと囁かれて、郁も自然と顔が紅くなる。
そんな郁に、堂上は優しく唇を重ねた。
「今年もよろしく」
「はい……」
堂上の言葉に、郁は再び笑っていた。
~fin~
夫婦。
窓から差し込む陽の光を感じて、郁はゆっくりと目を開けた。
「ん……」
「郁、起きたのか?」
自分に優しく声をかけてくれるのは、一人しかいない。
「篤……さん?」
「ああ、おはよう」
「おはよう」
堂上が郁に優しく微笑み、それだけで幸せになれる。
目を覚まして、朝から好きな人の笑った顔を見れて、自分は本当に幸せ者だと思う。
「もう、ご飯出来てるから、用意して」
「うん……」
郁は眠そうに身体を起こし、その仕草に堂上は笑ってしまう。
「郁ーー?」
「だいじょう……ぶ」
船を漕いでいる状態の郁に、堂上は何かを思いついた様子で郁に近づく。
「郁」
「!?」
堂上が郁の耳元で囁くので、その声に郁は目がぱっちりと開いた。
「起きた?」
「篤さん、ずるい……」
耳元で名前を呼ぶのは、反則だった。
郁は元々耳が弱い上に、堂上の声だと威力が大きい。
そのおかげで郁はしっかりと覚醒した。
「だったら、すぐに起きればよかったんだよ」
「……次からは気をつけます」
改めて、堂上には敵わない事を郁は思い知った。
~fin~
夫婦。
「篤さーん。お風呂出たよーー」
「ああ」
「……」
郁がお風呂を出ると、堂上はすでに寝室のベッドで本を読んでいた。
ただ本を読んでいるだけなのに、その真っ直ぐな眼差しに思わず見蕩れる。
その場に立っている郁に、堂上が視線を向けた。
「何突っ立ってんだ?」
「あ……」
そんな郁に、堂上が手招きをして隣に座らせる。
「まだ濡れてるじゃないか」
「でも、髪短いからすぐ乾いちゃうし」
「そう言ってすぐ風邪引くだろうが……いいから、ほら」
「もーー。大丈夫なのに」
郁は堂上にタオルを渡すと、それを受け取った堂上が髪を拭いている。
堂上は郁に対しては、人一倍世話を焼く。
郁は嬉しい反面、少し恥ずかしくなる。
「そう言えば、お前。昔髪が長くした時があったよな」
「あーと。パーティーの警護の時だよね。私が犯人を捕まえたら水浸しになっちゃって」
3年……いやもう4年も経つだろうか?
出版社主催のパーティーに、稲嶺の警護にあたった時だった。
犯人を捕まえたものの、噴水の中に落ちた郁はずぶ濡れになってしまった。
そのため、ホテルの関係者がドレスを用意してくれたが、
ドレスアップとウィッグをつけられてしまい、普段とは全く違う装いになった。
普段の郁を知っていれば、誰もが驚くような。
尚且つ、周囲の男の目を惹くほどだった。
そのため、郁が男に迫られたりと色々あったのだが……。
「普段は髪が短いから驚いた」
「確かに。私も伸ばしことがなかったから、新鮮でした」
あの時の事は、滅多に体験できないことだったと、今では思っている。
「伸ばしてみようとか思わないのか?」
「うーん。もうこの長さで慣れちゃったから、逆に違和感ありそう」
「そうか、お前らしい」
「それとも、篤さんは長いほうがいい?」
「俺か?」
郁が探るように堂上を見つめている。
あの時の郁は確かに綺麗だった。
その姿に見蕩れて、言葉にできはないほどに。
だが、男の目を惹くのだけは勘弁してほしい。
「俺はどっちでもいいけどな」
「えーー」
堂上の言葉に、郁は不満の声を上げる。
仕方ないので、わかりやすい言葉で付け足した。
「お前なら何でもいいってことだ」
「あ……ありがとうございます」
堂上の言葉が郁にとって、大きく揺れて顔が紅くなっていく。
昔話のついでに、郁はあの時に感じたことを口にした。
「あ、あの時、堂上教官が嘘でも『俺の女』って言ってくれて嬉しかったです」
そう言えばそんなことも言ったかと、堂上は思い出した。
照れて笑う郁が、今ではとても愛しい。
「あの時は嘘だったが……今でもそれは有効だ」
「はいっ」
「おい、こらっ」
堂上の言葉に嬉しくなり、郁は思わず抱きついていた。
~fin~
夫婦。
「うわぁーーーーっ」
その朝は、郁の叫び声から始まった。
その日は休日。
少し早めに目が覚めた郁は、朝食作りをしていたのだが・・・。
「また・・・、失敗しちゃった・・・」
郁が持っているフライパンには、目玉焼きらしきもの・・・があった。
色は焦げていて、形は崩れている。
とても食べる気にはなれない。
「ど・・・どうしよう・・・」
結婚してからというものの、家事は堂上と折半。
最初の頃は、郁と堂上はお互いに料理の腕は同じ位だった。
だが、どうしても得手不得手があるようで・・・。
明らかに堂上のほうが上達が早く、郁は失敗ばかり繰り返していた。
「うううっ・・・。篤さんの分も焦がしちゃったよ・・・」
自分だけならともかく、堂上の分まで失敗してしまい落ち込みは倍増だ。
食べ物を粗末にするのは気が引けたが、これを堂上に食べさせる気にはなれない。
意を決して処分しようとしたが・・。
「郁?」
「あ・・・。篤さんっ」
いつの間にか背後にいた堂上が、声をかける。
「お・・・おはよう。篤さん」
「おはよう。どうしたんだ?しょんぼりして」
郁は必死に隠そうとしたが・・・。
さすがに堂上は、郁の微妙な変化も見逃さない。
「え・・・・と。これ・・・」
「あーーー」
郁がフライパンの中身を見せると、堂上は納得した様に頷いた。
「ご・・・ごめんなさい。作り直すから・・っ」
堂上は郁の手を止め、郁が持っていたフライパンを取った。
「いいよ。食べるから」
「でも・・・」
「別に捨てることないだろう。郁がせっかく作ってくれたんだから、食べるよ」
「・・・・・・」
その言葉に郁は何も言えなくなる。
堂上は優しい。
郁の些細な失敗でさえ、許してくれる。
何とかして喜ばせたいのに、失敗ばかりだ。
「郁・・・?」
「ごめんなさい・・・。いつも失敗ばかりで・・・。ちっとも上手くならないし・・」
料理をまともに出来ない自分に、いつか堂上が呆れるのではと不安になってしまう。
だが、堂上はそんな郁の頭を優しく撫でた。
「ゆっくりでいい。これから上手くなればいいんだ」
「篤さん・・・」
優しい言葉をかけてくれる堂上に、郁は泣きそうになった。
「今日の昼は一緒に作ろうか。また、教えるから・・」
「うんっ」
堂上の提案に郁は頷いて、応えた。
少しでも喜んでもらえるようにするには、練習するしかない。
それを堂上は待っててくれている。
「ご飯にしよう。せっかく作ってくれたのが、冷める」
「あ・・そうだね」
郁と堂上は向き合いながら、席に着いた。
「いただきます」
2人の穏やかな休日が始まろうとしていた・・・。
夫婦。
「くしゅんっ」
「郁?寒いか?」
郁のくしゃみが聞こえて、堂上が台所へと寄ってくる。
「平気平気っ。何だか急に冷え込んできたね」
季節は11月も終わり。
特に今日は一段と冷え込んでいる。
「もうすぐ12月だし。いきなり寒くなったからかなぁ」
「確かにな」
堂上は郁の手を取り、その手を自分の手で握る。
「篤さん?」
「やっぱり温いんだな。お前の手」
「もーー。また、子供みたいとか言うんでしょ」
堂上の言葉に郁は思わずむくれる。
そういうところが子供なのだが、と言いかけて堂上はとどまる。
「でも、ここでずっといたら流石に風邪を引くな」
おいでと、堂上が郁の手を引きリビングまで連れてくる。
そして自分が座ったあとに郁を自分の膝の上にのせた。
「あっ……。篤さんっ」
「こうすれば少しはマシになるだろ」
「え……。えええっ」
堂上はその体勢のまま、郁をギュッと抱きしめていた。
堂上の身体から温もりが伝わってくる。
「郁?」
「ううーーっ。やっぱり恥ずかしいかも……」
それでもこの体勢を崩したくないのは、篤さんだから……。
「そうか。なら、しばらくこうしていよう」
「!!」
面白そうに言う堂上に、郁は更に顔が紅くなっていく。
2人の温もりが更に増していった。
夫婦。
食事を終え、郁は淹れたコーヒーを堂上へと持っていく。
「篤さん、コーヒーです」
「ん。悪いな」
堂上は自然と口に運び、コーヒーを飲み始めた。
「今日は普通だな」
「なっ、何ですか!!普通って!」
「いや、お前が以前、淹れたのはすごい甘かったからな」
以前郁の淹れたコーヒーは、砂糖を多めにしてしまい、相当甘くなってしまったのだ。
実際、今の自分の飲み物はカフェオレで、相当甘い。
「あ・・・あれは、色々と考え事をしてたからで」
あの頃は丁度、堂上が例の「王子様」と知って混乱していたからだ。
「でも、結局全部飲んでくれたし・・・」
「勿体無かったしな。それに・・・」
堂上は首を傾げている郁を見つめている。
「?」
「それに、お前が淹れたのを捨てる訳ないだろう」
堂上があの時、そんな風に考えていたなんて・・・。
その事が郁の心が嬉しくなる。
「・・・あ・・篤さん」
「ん?」
「ありがとう・・・」
堂上は郁の頭をそっと撫でて、軽く口づけた。
唇を離すと、堂上は感じた事を口にしていた。
「やっぱり・・・甘いな、それ」
「っ!!!何言って!!」
「思った事を口にしたまでだ。何ならもう一度試してみるか?」
「~~~~!!」
郁は紅くなりながらも、再び堂上に口づけられていた。
やはりそのキスは、いつもよりも甘い気がした。
夫婦。
「郁・・・。風呂でたぞ」
堂上が風呂から上がると、郁がいる筈の居間に声をかける。
だが、その声はなく静かだった。
「?」
不思議に思った堂上は、その場所へと向かった。
「・・・・・・全く」
堂上は郁のその状態を見て、納得した。
「・・・・すーっ・・」
郁は横になっており、熟睡していた。
そしてその顔は気持ちよさそうで。
「お前はすぐにどこでも寝るな」
食事を済ませたあとだったこともあり、眠くなってしまったのだろう。
郁が気持ちよくなるとすぐに寝てしまうのは、今に始まった事ではない。
仕事の休憩中でも、何度か目撃した事がある程だ。
「疲れてるんだろうな」
仕事と家の事。
いくら分担しているとはいえ、疲労は蓄積される。
たとえ本人が気づいていなくても。
「仕方ない・・・」
そう言って堂上は、郁の身体を抱き上げた。
郁が起きている状態なら、きっと喚くだろうが今は夢の中。
腕の中の妻は、幸せそうな顔で眠っている。
「ん・・・」
一瞬起きたかと思ったが、郁は甘えるように堂上に擦り寄ってくる。
普段からこうして甘えてくる事はないので、堂上としては意外だ。
「猫か・・・お前」
普段は犬のような活発さで行動するくせに、今は猫のように甘えてくる。
いつもこうして甘えればいいのにと、堂上は考える。
郁自身はそれなりに甘えているだろうが、時々遠慮する事がある。
堂上はそれが腑に落ちなかったが、初心な郁には色々と難しい。
「よっと・・・」
堂上は郁を寝室のベッドへと下ろした。
だが・・・。
「んーーっ」
「おい・・・」
郁はその温もりを逃がさないように、しっかりと堂上の手を掴んでいた。
これが無意識だから困る。
堂上は眠る郁の額にそっと口づけた。
「おやすみ・・・」
堂上の声が聞こえたのか、郁がそっと微笑んだ気がした。
恋人同士。
「あいたたたっ。痛いです、堂上教官っ」
「煩いっ。黙って我慢しろ」
医務室で郁は悲鳴を上げる。
勤務医が不在のため、堂上が代わりに郁の手当てをしていた。
「全く。女のくせに顔に傷作りやがって」
「でも、犯人は捕まったんだし・・・」
「それでも、これはないだろうが」
「・・・・・」
堂上の怒りに郁は黙るしかない。
そもそもの原因は、郁が巡回中に窃盗を働こうとした犯人を見つけた。
犯人は脱兎のごとく逃げ出したが、走りでは郁には敵わない。
捕まえる時に、犯人のナイフが郁の頬を掠めた。
見切ったものの、郁の頬から軽く血が流れる。
だが、それで怯む郁ではない。
すぐさま、犯人に打撃を与え犯人は御用となったのだが・・・。
傷を見た堂上が怒り、即効で郁を医務室へと連行したのだった。
「ほら、終わったぞ」
「あ、ありがとうございます」
郁の頬には絆創膏が貼られた。
血が流れたものの、傷自体は小さいもので堂上は安堵した。
だが、堂上の怒りは収まらない。
再び説教の時間が始まろうとしていた。
「お前は、怪我が多くて困る」
「そ、それは堂上教官だって言えないですよ!!小牧教官が言ってました」
「お前と俺だと違うだろっ。お前は女で、俺はお前に傷を作ってほしくない」
「っっ」
堂上の声から心配が伝わってきて、郁は罪悪感が芽生える。
「郁が血を流してるのを見て、肝が冷えた」
「ごめんなさい・・・」
もう謝るしかない。
自分の無茶な行動が、またしても堂上を心配させてしまった。
落ち込んでしまった郁に、堂上は郁の頭を撫でた。
「だが、上官としては誉めてやる。よくやったな」
「教官・・・」
その言葉に郁は安心する。
自分は、部下としても彼女としても大事にされている。
それがこんなにも嬉しいなんて。
「郁。お前はすぐに突っ走る奴だから、きっとこれからもこういう事があるんだろうな。
けど、それでもお前に傷があるのは嫌なんだよ」
堂上はギュッと郁を抱きしめていた。
「それは私だって同じですよ。私だって堂上教官に傷なんて作ってほしくないです」
逆の立場だったら、きっと自分も怒る。
今の堂上のように、心配して怒ってしまうんだろう。
堂上は、郁の絆創膏の頬にそっと口づける。
そうされると、とてもくすぐったい。
「んっ」
堪らず郁から声が漏れる。
堂上は郁の身体を離して、解放する。
郁は頬を押さえ、顔を真っ赤にしている。
「ど、堂上教官・・・。まだこれから仕事が残ってるのに・・・」
「これくらいはな」
堂上はしれっとした顔で言い放つ。
その余裕が郁には悔しい。
「ほら行くぞ、郁」
堂上は郁に手を差し出す。
郁は真っ赤になりながら、その手を掴んでいた。
~fin~
恋人同士。
――時々、困る事がある。
堂上が閲覧室へ着くと、郁が先に来ているのが見えた。
「……かさ…」
その名を呼ぼうとして、堂上は留まる。
郁が、隊員の一人と話していたからだ。
堂上が覚えてる限りで、あの男は郁に対して好意を持っている筈だ。
案の定、男の顔はだらしなくなっていた。
だが、郁はそんなことに全く気がつかずに笑顔を見せている。
その無防備さに、堂上は困る。
恋人となる前から、郁は隙だらけで。
恋人となった今も隙だらけだった。
そんな風に思っていると、郁が堂上に気づいた。
郁は一目散に、堂上に駆け寄ってくる。
「おはようございます、堂上教官っ」
「……おはよう」
先ほどとは違い、その表情はとても嬉しそうで。
それが自分に会えてだと思うと、堂上が嬉しくなるのは当然で。
郁は、あまりにも満面の笑みを見せるから、堂上は思わず……。
「お前には負ける」
「ええ!!何ですか、急に!!」
郁の頭を軽く叩いて、堂上は笑っていた。
郁はその仕草に、首を傾げるしかなかった。
この可愛い恋人には、何をやってもかなわないだろう……。
~fin~
恋人同士。
あいつは無鉄砲で、単純でそれにすぐ突っ走る。
その度に、心配で怒鳴らずにはいられない。
それが上官の時の評価だった。
けど、その反面。
郁はすごく純粋で素直だ。
そしてそんなところが…。
「笠原さんって、普段からもっと化粧とかしたら綺麗なんじゃない?」
「何だ、急に」
夜に寮内で小牧と飲んでいると、急にそんな話を振ってきた。
「いや、さ。率直な感想だよ。普段は戦闘職種だから仕方がないけど、館内業務だったら
もっとしてもいいんじゃないかと思ってさ」
「さあな。あいつは元々そういうのが得意じゃないからな」
堂上は自分と2人でいる時でも、そこまで華美にしない自然体な郁を思い出す。
「まあ、最近の笠原さんだったら、注目浴びそうだけどね」
「どういう意味だ」
「最近綺麗になったって、男どもからの評判だよ」
「…………」
小牧の話を聞いて、堂上は渋い顔になる。
堂上の耳にもその評判は聞いている。
周囲には堂上と郁が付き合っていることは知れているため、直接には何もないが、
遠くで懸想している者も少なからずいるはずだ。
その事は、当然堂上にとって面白くない。
「で、堂上としてはどうなの?」
「何がだ」
「もっと、笠原さんに化粧してほしいとか思わないの?」
小牧はからかい口調で言っているのが、堂上にはわかる。
それがますます、堂上にとっては面白くない。
それならばもう、開き直るだけだ。
「別に必要ないだろ」
「あれ?そうなの?」
「あいつは化粧なんかしなくても、十分可愛いしな」
郁の自然体な笑顔こそ、何より可愛くて愛しい。
それでこそ、自分が惚れている郁の部分だった。
「惚気だね。いかに堂上が彼女のことを好きかわかったよ」
「煩いっ」
開き直ったものの、小牧の言葉に堂上は強い口調で言葉を切る。
その表情は照れ隠しで紅潮している。
結局、小牧の言葉を上手くかわせず、からかわれる一方だった……。
恋人同士
「堂上教官ッ」
「ん?」
業務が終わった時間になると、郁が声をかけてきた。
「どうした?」
「あの、今日お誕生日ですよね。これ・・・」
郁は堂上に綺麗にラッピングされた袋を渡した。
堂上は受け取って、軽く郁の頭を撫でる。
「ありがとう・・・な」
その顔がとても嬉しそうで、郁もつられて笑ってしまう。
「見てもいいか?」
「あっ!!はいっ」
堂上が袋から出したのは、紺色のマフラー。
「色々と考えたんですけど、やっぱり普段から使えるものがいいかなって」
「ああ。大事にするよ」
郁が堂上を見ると、とてもやわらかい表情をしていて。
こんなプレゼントを贈るなんて、去年までは考えられなかった。
「まさか、貰えるとは思ったなかったから驚いた」
「ほんとは去年も渡したかったんですけど・・・。去年は色々あって、渡せなかったですし」
「そうだな・・・」
去年は当麻の事件の最中で、良化隊への警備でそれどころではなかった。
「今年は色々あったな」
「そうですね」
当麻の事件の中で、堂上が負傷したり・・。
その合間で告白して・・・、ようやく恋人同士になって。
そして当たり前のように、2人で笑っている。
そんな日常が次の年もその次も続けばいい・・・。
「郁」
「はい?」
「お前、今年はやっぱり里帰りしないのか」
「ううっ。それを持ち出しますか?言ったじゃないですか。まだちょっと気まずいって」
実家の話になった途端、郁の表情が硬くなった。
「まあ、な。大分前よりはマシになったんだろう?」
「そうですけど・・・。でも・・・まだ時間は欲しいです」
以前だったら、断固拒否していただろう。
拒否していただけだった郁が、少しだが歩み寄りしている。
「でも、最近は以前よりも電話するようになったんですよ?」
「そうか・・・」
堂上は再び、郁の頭を撫でる。
それは褒めているのと同じで、少しくすぐったい。
「教官は、やっぱり帰られるんですよね?」
「普段は中々帰れないし、こういう時くらいはな」
「そうですか・・・」
郁が少し、下に顔を向けてしょんぼりしている。
その様子が堂上には可笑しくて、堪らない。
「何だ?寂しいのか?」
「なっ・・・。もーーーーっそうですよ。柴崎も里帰りだし・・・寮に1人で教官にも会えなくて寂しいです」
「!!」
少しからかうつもりだったのが、素直な郁の言葉に堂上は何も言えない。
それどころか、こっちが動揺してしまっている。
(まったく・・・こいつは)
「郁・・・」
「はい?」
「年が明けたら、一緒に出かけるか?」
「ええっ!?いいんですか?」
堂上の提案に、郁は瞳を輝かせている。
「ああ。今日のお礼もしたいしな」
「そんなっっ。お礼なんてっっ」
「いいから。出かけたい場所、考えとけよ」
「っ~~!!はいっ」
郁は可愛らしい笑顔で、元気よく返事をしていた。
恋人同士。
それはある夜のこと。
「うーーーん」
「何唸ってんのよ。笠原」
郁がテーブルで突っ伏していると、柴崎がそんなに郁に気づいた。
「あんた、また何かやらかしたわけ?」
「ちょ・・・っ!!人がいつも問題起こしてるみたいに・・・」
「事実でしょうが」
「・・・・」
柴崎の言葉は正しく、郁は反論出来ない。
「で?何悩んでの?仕事絡み・・・それとも」
柴崎は面白そうな顔で話を続ける。
「堂上教官?」
「・・・・・・・・・・・」
郁はその言葉を聞いて、しっかり黙り込んでしまっている。
それが即ち、肯定を意味するのだが。
「また、堂上教官と喧嘩したの?」
「ちが・・・っ。そうじゃなくて・・・」
「何なのよ」
郁は言いづらそうに、小声で話を切り出した。
「何か・・・。堂上教官って大人だなーーって」
「は?何を今更」
堂上だけでなく、自分たちもいい大人なのだが・・・。
「何ていうか・・・。堂上教官はさ。色んなことをすんなりやっちゃうんだよね」
「わかんないわね。何がよ」
「その・・・キスとか、名前を呼んだりとか」
「・・・・・・・・・・・・・」
当麻の事件の時に自分からしたキスは、かなりぎこちない。
それに引き換え、堂上のキスはとても優しかった。
郁は未だにそれを慣れない。
必死に追いつこうと精一杯だった。
そして気がつけば、堂上は自分を名前で呼ぶ。
自分は未だに辿り着けないのに。
それは堂上の今までの経験で、大人だという事だ。
頭ではわかっていても、胸が痛くなる。
「惚気か・・・。アホらし」
「え・・・何でそうなるの!?」
郁としては惚気ているわけではなく、真剣に悩んでいるのだが。
「惚気よ。堂上教官が大人なのは当たり前でしょ?30代の男なんだし」
「それはそうだけど・・・」
「その上で、名前を呼んだりとかキスとか、恋人同士なら当然のことでしょうが」
「それもそうなんだけど・・・」
「まあ、ずっと上司と部下だったんだし。あんたはすぐ切り替えできないでしょ?」
「ううう・・・・」
「その分、堂上教官が大人なのは当然。あんたはそれに甘えてればいいんじゃない?」
「そうなのかな?」
何せ郁にとっては、付き合うこと自体が初めてなのだ。
そのため、些細な事でも気になって仕方がない。
「あんたは全く・・・・可愛らしいわね」
今時、こんなに初心な女は本当に珍しいのではないか?
そんな事を柴崎は思う。
だからこそ、堂上は惹かれたのだろうけど。
しかし、郁にはそんな余裕がまるでない。
(ま、楽しませてもらいましょうか?)
柴崎の楽しみはこの鈍感カップルがどうなるか、だ。
この純情乙女を、あの堅物な教官がどうするのかが楽しみである。
だが、これは下手に入っていかないで、遠くから見物するからこそだ。
「うーーーーんっ」
そんな柴崎の思いを他所に、郁はひたすら悩み続けていた。
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プロフィール
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文月まこと
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乙女ゲーム・八犬伝中心に創作しています。萌えのままに更新したり叫んでいます。
同人活動も行っています。
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