「信乃……」
「だって……」
荘介が信乃の部屋と入った時……信乃の様子に、ため息が出る。
信乃は全く食事に手をつけてなかったからだ。
病に冒される信乃は……全くと言っていいほど食べない。
そのため、身体は弱ってやせ細っていく。
信乃は布団の上で横になっていた。
「信乃。何か食べないと……」
「食欲なーい」
「信乃っ」
「だって……食べたくないんだよ」
信乃はまるで食べる素振りもなく、荘介は困り果てる。
このままでは弱っていく一方だというのに……。
「どうしたら……食べてくれます?」
信乃はジッとこちらを見つめて、何かを考えている。
「荘介が……食べさせてくれるなら……食べる」
「は?」
「ダメ?」
「………」
信乃の訴える目に荘介は押し黙る。
外見では女の子にしか見えないのに、信乃はれっきとした男の子だ。
身体が弱い信乃は風習として、女の子の格好をさせられている。
身体は弱いのに、口調は乱暴でわがまま。
そんな信乃に、荘介はいつも負ける。
「仕方ありませんね……。食べてください」
「うん」
そう言って荘介は、信乃の布団の傍に寄る。
横になっていた信乃も起きてくれて……荘介は安堵した。
「荘……」
「はい……し……」
荘介が信乃の名を呼ぶ前に、その唇が塞がれる。
「っ!!」
「…………」
確かな感触に、荘介は固まったまま動けない。
キスしているのだと実感した時には、唇が離れていた。
「よしっ」
してやったりと笑う信乃に対して、荘介は驚いたままだ。
今起きたことを……受け止められていないのかもしれない。
「な……信乃っ!!」
「だって、こうでもしないと……してくれねーじゃん」
「だからって……こんな……」
「したかったからしたんだ。文句言うな」
「…………」
わがままにも程があるというか……。
どうすればいいのかわからない。
人の気持ちも知らないで……。
意地悪く……信乃は笑っている。
まるで、小悪魔のように……。
「わかりました……信乃」
「ん?」
「食事は俺が今からしっかりと食べさせてあげますから……覚悟してくださいね」
「げっ!!荘介が目が怖いんだけど……」
「知りません!」
荘介は嫌がる信乃へと……食事を食べさせる。
湧き上がった自分の気持ちには……気づかない振りをして。
~fin~